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AI×経理

AI仕訳の精度はどう測る?AI-OCRと生成AIの違い

執筆: 4649編集部

「AI仕訳の精度」は、ひとつの数字では表せません。証憑から金額や日付を取り出す読み取りの精度と、その取引にどの勘定科目・どの税区分を当てるかという判断の精度は、別々の技術が担う別々の性能だからです。ベンダーが掲げる「認識精度99%」はほぼ前者、しかも多くは文字単位の値。実務の負担を決めるのは後者と、誤りに気づける形で出てくるかどうかのほうです。

この記事では、AI-OCRと生成AIが担う工程の違いと誤り方の癖を整理し、自社の証憑50件で精度を測るための手順と評価シートを示します。カタログの数字を読み比べるための記事ではありません。

「精度99%」が実務の体感と合わない理由

同じ「99%」でも、分母が何かで意味が変わります。精度の表示には少なくとも3つの粒度があります。

請求書1枚から取り出す項目を10(日付/取引先名/登録番号/品目/数量/単価/税抜金額/消費税額/適用税率/合計)、1項目あたり平均8文字とすると、1枚で80文字を読むことになります。文字単位の正解率が99%で、誤りが各文字に独立して起きると仮定すれば、1枚まるごと誤りゼロで通る確率は 0.99 の80乗、つまり約45%。一方、項目単位で99%なら 0.99 の10乗で約90%です。

同じ99%を掲げていても、手を入れずに済む請求書は45枚か90枚か。この差が「導入したのに思ったほど楽にならない」の正体です。

実際の誤りは各文字に均等に散らばりません。手書き、かすれ、複数税率の行、複数ページにまたがる明細といった特定の証憑に偏ります。上の計算はあくまで分母の違いが持つ意味を示すための算術であって、測定結果ではありません。だからこそ、カタログの数字は自社の判断材料になりません。

AI-OCRが担うのは読み取り、生成AIが担うのは判断

仕訳ができるまでには、画像を文字にする工程と、取引の内容から科目を決める工程があります。担う技術が違い、誤り方も違います。

工程主に担う技術典型的な誤り方誤りの見つけやすさ
証憑を項目データにするAI-OCR桁落ち(1,250,000→125,000)、1と7・0とOの取り違え、小計行と合計行の混同、8%行と10%行のずれ、押印やロゴに重なった文字の欠落高い。数字の形が崩れるので目視で気づける
取引の内容から仕訳を組む生成AI・ルール会社の方針と違う科目の割り当て、同じ証憑を2回処理したときの結果の揺れ、証憑に書かれていない項目を推測で埋める補完低い。文としては整っており、ありそうな仕訳に見える

AI-OCRの誤りは、目立ちます。請求書の合計が桁ひとつ小さければ、残高が合わないので後工程で必ず引っかかる。厄介なのは生成AIの誤りのほうです。

たとえばクラウドサービスの月額利用料。通信費で処理する会社もあれば、支払手数料や消耗品費、あるいは専用の科目を立てている会社もあります。どれも会計的にありえない処理ではないので、AIが自社の方針と違う科目を返しても、仕訳一覧を眺めているだけでは誤りに見えません。読み取り誤りは「変な数字」として浮くが、判断誤りは「ありそうな仕訳」として沈む。 検証の設計はここを前提に組む必要があります。

補完も同じ性質を持ちます。証憑に登録番号が印字されていないのに、AIが取引先名から推測して番号を埋める。出力の形式は完璧なので、そのまま流れます。

仕訳の精度は項目ごとに分けて測る

仕訳を1件まるごと「合っている/間違っている」で採点しても、次の手が決まりません。項目に分け、さらに正解が誰によって決まるかで2群に分けます。

証憑が正解を決める項目は、日付・取引先名・登録番号・税抜金額・消費税額・適用税率。証憑を見れば正誤が一意に決まるので、誰が採点しても同じ結果になります。

自社の方針が正解を決める項目は、勘定科目・補助科目・部門・一部の税区分。この群は、自社に方針がなければ採点そのものができません。科目の割り当て方針が担当者の頭の中にしかない会社では、AIの出力が正しいかを判定する基準が存在しない。「精度が測れない」と感じるとき、原因はツール側ではなく自社側にあります(この論点は経理の自動化はどこから始める?で前提条件のひとつとして整理しました)。

登録番号だけは、この2群のどちらとも違う扱いができます。国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで実在を確認でき、システムから照会するWeb-API機能も公開されているため、読み取った番号が実在するか、公表されている名称と請求書の発行元が一致するかを機械的に検証できます。実在しない番号が出てきたら読み取り誤りか補完のどちらか。前節で触れた「証憑にない番号を埋める」挙動は、この照合で捕まえられます。

適格請求書に記載が必要な事項は、国税庁タックスアンサーNo.6625 適格請求書等の記載事項に示された6項目です。読み取り項目の設計は、この6項目を土台に組むと過不足がなくなります。

なお、消費税の税区分の判定は税務上の判断を含みます。判定に迷う取引の取扱いは顧問税理士に確認してください。制度の詳細は国税庁のインボイス制度に関するQ&Aが一次情報です。

自社の証憑50件で測る手順

導入前の検証は、次の5ステップで足ります。1〜2日で終わる作業です。

1. 証憑を無作為に50〜100件抽出する。 直近1ヶ月から選び、定型の請求書だけを集めないこと。手書きの領収書、複数税率が混じった請求書、複数ページの明細、外貨建て、少額のレシート。実際の月に含まれる比率で混ぜます。きれいな証憑だけで測った数字は、運用開始後に必ず下振れします。

2. 正解データを先に作る。 人が証憑と突合して確定させた仕訳を、AIに読ませる前に用意します。AIの出力を見てから正解を決めると、無意識に甘くなる。順序が結果を変えます。

3. 項目別に一致を判定する。 下の評価シートに沿って、項目ごとに○×を付けます。

4. 誤りを3つに分類する。 読み取り誤り(証憑にはあるが違う値になった)/判断誤り(自社方針と違う科目・税区分)/読み取り不能(保留として上がってきた)。分類しないと、次に打つ手が「別のツールを試す」しかなくなります。

5. 1件あたりの修正時間を測る。 誤りを見つけて直すまでの実測値。ここを飛ばした検証は判断に使えません。

精度評価シート

No証憑種別日付取引先名登録番号税抜金額消費税額勘定科目税区分全項目一致誤りの分類修正時間(分)
1請求書(10%)0
2領収書(手書)××読み取り2
3請求書(複数税率)×××読み取り/判断5
項目別正解率%%%%%%%%合計

読むべき数字は3つです。項目別正解率は、どこを直せば効くかを教えてくれます。全項目一致率は、そのまま使える仕訳の割合であり、現場の体感に最も近い。そして修正時間の合計が、導入後に残る作業量です。

判定の基準は単純で、「修正時間の合計 + 保留分の処理時間」が現在の作業時間を明確に下回らないなら、その仕組みは効果を出しません。項目別正解率が95%でも、全項目一致率が60%で1件5分かかるなら、50件で100分。今の作業時間と並べて比べてください。

精度を決めるのは、モデルより前提の整備

同じツールを入れても、会社によって結果が違います。差がつくのは次の3点です。

取引先と科目の対応表。 判断項目の精度を最も動かすのがこれです。定期的な取引のある上位50社を並べ、科目・補助科目・税区分・部門を確定させた表を1枚作る。それだけで、判断誤りのかなりの部分が消えます。AIに揃える先を渡していない状態で精度を語っても始まりません。

取引先マスタと登録番号の紐付け。 請求書の発行元名と会計上の取引先名は、しばしば一致しません(屋号と法人名、支店名の有無、旧社名)。マスタ側に登録番号を持たせておくと、読み取った番号から取引先を一意に引けるようになり、名寄せの誤りが減ります。

入力の画質。 電子帳簿保存法のスキャナ保存では、読み取りの要件として解像度200dpi以上・赤緑青それぞれ256階調以上が定められています(一般書類はグレースケール保存も可、国税庁電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】)。これは保存の要件ですが、読み取り品質の下限としてもそのまま使えます。折れたレシートを伸ばさずに撮る、複数枚を斜めに重ねて一括スキャンする——この2つをやめるだけで、読み取り誤りは目に見えて減ります。

「何%か」より「誤りをどこで捕まえるか」

精度100%の仕組みは存在しません。人が全件を手作業で起票しても100%にはならない。だから設計上の問いは「精度は何%か」ではなく、残る誤りをどの工程で捕まえるかになります。

判断の根拠が仕訳に残っているか。AIが迷った仕訳が、迷ったものとして識別されて上がってくるか。起票とは別に、全件を横断で見るチェックの工程があるか。この3つが揃っていれば、精度が数ポイント低くても実務は回ります。逆に、根拠が残らず保留も出ない仕組みは、精度がいくら高くても、残りの数%を人が見つけられません。

当社の4649経理代行は後者にならない形を取っています。4649記帳代行では判断が必要だった仕訳に根拠コメントを添えて納品し、4649仕訳チェックでは勘定科目・税区分の誤り、二重計上、期ずれといった観点でAIが全仕訳を確認します。記帳の主体は問わないため、自社や会計事務所が記帳したデータに対してチェックだけを使うこともできます。4649記帳代行では、従来2週間かかっていた記帳作業が1日に短縮された事例があります(※実際のご利用者様の事例です。納期は業務内容やボリュームにより異なります)。

ツールを比較する段階で止まっている会社は多いのに、自社の証憑で測っている会社は多くありません。50件を1回測れば、候補は自然に絞られます。工程ごとの自動化の効き方は経理業務のAI活用ガイドに、どの業務から着手するかは経理の自動化はどこから始める?に、工程ごと外部に委託する形態についてはAI経理代行とは?従来型BPOとの違いにまとめています。

よくある質問

Q. ベンダーが公表している「認識精度99%」は、自社でもそのまま出ますか?
同じ数字が出ることは、まずありません。公表値は様式が揃った定型帳票を良好な条件で読み取ったときの値であることが多く、しかも分母が文字単位か項目単位か帳票単位かで意味がまったく変わります。文字単位99%は、1枚から80文字を取り出す請求書では「1枚まるごと誤りゼロ」が5割を切る水準です。自社の証憑には手書きの領収書も、複数税率が混じった請求書も、かすれたレシートも含まれます。判断材料にするなら、公表値ではなく自社の証憑50件で測った数字を使ってください。
Q. AIが作った仕訳は、どこまで人が確認すればよいですか?
確認範囲は項目別の精度と、誤りの見つけやすさの2つで決まります。金額や日付の読み取り誤りは形が崩れるため目視で気づけますが、勘定科目や税区分の判断誤りは「ありそうな仕訳」の顔をして紛れ込むので、流し読みでは拾えません。判断が分かれた仕訳が識別され、根拠が残る仕組みであれば、確認をその分に絞れます。そうでない場合は全件確認が前提になります。なお帳簿の内容に責任を負うのは自社であり、AIが作ったことは免責の理由になりません。個別の税務上の取扱いは顧問税理士にご確認ください。
Q. 記帳を会計事務所に依頼しています。精度はどう測ればよいですか?
まず事務所がどの工程をどう処理しているかを共有してもらうところからです。事務所側で読み取りから起票まで仕組みを持っている場合、自社でツールを比較するより、証憑の渡し方を変えるほうが早いことがあります。自社側で測るなら、戻ってきた仕訳のうち自社から修正を依頼した件数を、科目・税区分・金額・日付の項目別に3ヶ月記録してください。どの項目で認識がずれているかが見えると、事務所との擦り合わせが「精度が低い」という水掛け論になりません。税務判断を伴う論点は事務所・顧問税理士の領域です。