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AI×経理

ChatGPTを経理で使う際の注意点:入れてよい情報と使えない工程

執筆: 4649編集部

経理でChatGPTを使ってよいかどうかは、「機密情報かどうか」ではなく、その出力が帳簿・申告に載るかどうかで線を引くと迷いません。載らないもの(規程の下書き、Excel関数、業務手順の説明、社内メールの文面)は、契約プランさえ間違えなければ今日から使えます。載るもの(仕訳、税区分、決算数値、税務判断)は、AIに出させても構いませんが、そのまま帳簿にはできません。

問題は、この2つが同じチャット画面の中で地続きになっていることです。「経費規程の文面を作らせる」ついでに「この領収書の科目は?」と聞いてしまう。この記事では、入力してよい情報の線引きをプラン別に整理し、任せられる工程と任せられない工程を分け、社内ルールとして配れる最小限のひな形まで示します。

入力してよい情報は、契約しているプランで変わる

同じ「ChatGPTに貼り付ける」でも、どのプランかで意味が変わります。2026年9月時点のOpenAIのデータの取り扱いに関するポリシーでは、APIおよびChatGPT Business・Enterprise・Eduは、入力と出力を既定ではモデルの学習に使わない扱いです。一方、個人向けプラン(Free・Go・Plus・Pro)は、設定でモデル改善への利用をオフにするまで学習に使われうる。無料アカウントで試した人がそのまま業務に使い続けている状態が、いちばん危ない。有料の Plus や Pro に上げても、個人向けである限り扱いは変わらないという点も見落とされがちです。プラン構成もポリシーも改定されるため、社内で使うサービスを決めるときは最新の記載を確認してください。

ここに個人情報保護法が重なります。個人情報保護委員会は生成AIサービスの利用に関する注意喚起(令和5年6月2日)で、個人情報取扱事業者に対して2点を求めています。個人情報を含むプロンプトの入力は、特定した利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認すること。そして、あらかじめ本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答の出力以外の目的で取り扱われる場合は法違反となる可能性があるため、提供事業者が当該個人データを機械学習に利用しないことを十分に確認すること

経理が扱う書類は、この「個人データ」に触れやすい。請求書の担当者名、旅費精算の申請者名と経路、給与の支給額、代表者の個人名義口座。取引先名だけの法人情報とは別の慎重さが要ります。

実務としての線引きは3段階で足ります。

区分扱い
そのまま入れてよい制度の一般的な解説を求める質問、Excelの数式、規程のたたき台、業務フローの説明文個人向けプランでも可
法人プラン+社内承認があれば入れてよい取引先名・金額を含む請求書データ、部門別の集計値、勘定科目マスタ学習に使われない契約であることを確認
入れない従業員の氏名を伴う給与・評価情報、マイナンバー、健康情報、未公表のM&A・資金調達に関する数値匿名化しても復元されうるものは入れない

総務省・経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版・令和8年3月31日)も、AI利用者に対して入力データの適切性の確認を求めています。社内ルールを作るときの下敷きに使えます。

任せられる工程と、任せられない工程

工程で分けると判断が速くなります。境目は「出力が最終成果物になるか、人の作業の材料で終わるか」です。

工程ChatGPTの向き不向き理由
経費規程・経理規程のたたき台作成向く人が全文を確認して確定させる。出力は下書きで終わる
Excel関数・スプレッドシートの数式作成向く結果が合っているかを自分で検算できる
制度の概要を短時間で把握する条件付きで向く当たりをつける用途に限る。必ず一次情報で裏を取る
会計処理の説明文を作る(社内向け・監査対応の説明メモの下書き)条件付きで向く事実関係は人が埋める
証憑からの読み取り・起票業務用途では専用の仕組みを使う保存要件・件数・再現性の担保が別途必要
勘定科目・税区分の確定向かない自社の方針を知らない。誤りが「ありそうな仕訳」の形で紛れる
個別の税務判断・税額計算使わない税理士の独占業務。誤りのコストが大きい

科目や税区分の誤りが厄介なのは、文としては整っているせいで、仕訳一覧を眺めても違和感が出ないところです。クラウドサービスの月額利用料を通信費で処理する会社もあれば、支払手数料や消耗品費を使う会社もある。どれも会計的にありえない処理ではないので、自社の方針と違う科目が返ってきても誤りに見えません。この性質と検証のやり方はAI仕訳の精度はどう測る?で詳しく書きました。

証憑をアップロードしても、電子帳簿保存法の保存にはならない

領収書の画像をチャットに投げて金額を読ませる。便利ですが、それは保存ではありません。

電子帳簿保存法が求めるのは、大きく真実性の確保と可視性の確保です。スキャナ保存の具体的な要件を定めているのは電子帳簿保存法施行規則で、解像度200dpi以上・赤緑青それぞれ256階調以上といった読み取りの要件、タイムスタンプまたは訂正削除の履歴が残るシステムでの保存、そして日付・金額・取引先による検索機能の確保が求められます。実務上の解釈は国税庁電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】(令和8年7月)にまとまっています。メールやWebでやり取りした請求書などの電子取引データにも、同様に真実性と可視性の要件がかかります(同【電子取引関係】)。一問一答は毎年改訂されるため、参照するときは国税庁サイトで最新版を確認してください。

チャットの会話履歴は、この用途に設計されていません。電子帳簿保存法が求める意味での訂正削除の履歴管理も、取引先・金額・日付による検索も、税務調査での提示を前提とした出力機能もない。証憑は要件を満たす保存先に置いたうえで、ChatGPTには下書き用のコピーを渡す——順序を逆にしないことです。

もうひとつ、実務で効いてくるのが根拠が残らないという点。ChatGPTに読ませて起票した仕訳は、なぜその科目になったのかがチャットの中に流れていきます。半年後の決算監査や税務調査で「この処理の根拠は」と聞かれたとき、会話履歴を遡るのは現実的ではありません。仕訳の横に根拠が残る形になっているか。ここは工程設計の問題であって、AIの性能の問題ではない。

税務判断を聞くときに、越えてはいけない線

制度の概要を尋ねるのは自由です。ただし、返ってきた内容をそのまま社内の判断根拠にするのは避けてください。理由は2つあります。

ひとつは精度の問題。生成AIは、事実に基づかない内容をもっともらしい文章で返すことがあります。税制は改正が入る領域なので、古い前提のまま答えが返っても文面からは判別できない。税率、適用期限、特例の要件——このあたりは特に、国税庁のタックスアンサーや一問一答で必ず裏を取ってください。

もうひとつは法律の問題。税理士業務の範囲を定めているのは税理士法第2条第1項で、税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つがこれにあたります。そのうえで第52条が、この税理士業務を税理士・税理士法人以外の者が行うことを禁じています(国税庁税理士制度のQ&A)。当社を含め、税理士でない事業者は個別の税務相談に応じられません。AIの出力を社内で回覧して「これで処理する」と決めることは、それ自体が違法になるわけではありませんが、判断の責任は自社に残り、誤りがあれば修正申告や加算税の対象になるのは自社です。顧問税理士がいるなら、判断が分かれる論点は事務所に投げるのが結局いちばん速い。

会計事務所とChatGPTは、代替の関係ではありません。事務所は税務判断と申告の責任を持ち、AIは一次情報への当たりをつけたり、社内の説明文を整えたりする作業を引き受ける。事務所への質問を減らすためではなく、質問の精度を上げるために使うと考えると、置き場所を間違えずに済みます。

社内ルールの最小セット

ガイドラインを厚く作る必要はありません。経理部門で配るなら、この6項目で足ります。そのままコピーして自社の名称に置き換えて使ってください。

経理部門における生成AI利用ルール(最小版)

1. 利用するサービスとプラン
   会社が契約した ______(サービス名・プラン名)のみを業務に使用する。
   個人アカウント・無料プランでの業務利用は禁止する。

2. 入力してよい情報
   一般的な制度・実務に関する質問、数式、規程や文書のたたき台。
   取引先名・金額を含むデータは、上記の会社契約アカウントに限り可。

3. 入力してはいけない情報
   従業員の氏名を伴う給与・人事情報、マイナンバー、健康情報、
   未公表の投資・資金調達・組織再編に関する数値。

4. 出力の扱い
   帳簿・申告書・対外提出物に載る数値および科目・税区分は、
   AIの出力をそのまま採用しない。担当者が根拠資料で確認したうえで確定する。

5. 税務判断
   個別の税務上の取扱いは顧問税理士に確認する。AIの回答は判断根拠にしない。

6. 証憑の保存
   証憑の原本は ______(保存システム名)に保存する。
   AIサービスへのアップロードは保存とみなさない。

制定日:____年__月__日/管理責任者:______

運用で効くのは2番と3番の具体度です。「機密情報を入力しない」と書くだけのルールは守られません。給与、マイナンバー、未公表の資金調達——自社で実際に扱っている項目名で書くこと。

ChatGPTが経理で効くのは、下書きと説明

整理すると、ChatGPTが経理で確実に効くのは、成果物ではなく下書きと説明の領域です。規程の初稿、手順書の文面、監査で聞かれたときの説明メモ、Excelの数式、新任担当者向けの制度の要約。ここは人が全文を読んで確定させるため、誤りが混じっても手前で止まります。

逆に、証憑の読み取りから起票、科目や税区分の確定、全仕訳の点検といった帳簿に直結する工程は、汎用のチャットではなく、判断の根拠があとから残る形で組む領域です。なお、証憑の保存そのものは電子帳簿保存法の要件を満たすシステム側の話で、当社が引き受けるのは記帳と点検の工程です。当社の4649経理代行では、4649記帳代行が判断の必要だった仕訳に根拠コメントを添えて納品し、4649仕訳チェックが勘定科目・税区分の誤り、二重計上、期ずれといった観点でAIによる全仕訳の確認を行います。記帳の主体は問わないため、自社や会計事務所が記帳したデータに対してチェックだけを使うこともできます。4649記帳代行では、従来2週間かかっていた記帳作業が1日に短縮された事例があります(※実際のご利用者様の事例です。納期は業務内容やボリュームにより異なります)。

どの工程から自動化に着手するかは経理の自動化はどこから始める?、工程ごとの自動化の効き方は経理業務のAI活用ガイド、外部委託の形態についてはAI経理代行とは?従来型BPOとの違いにまとめています。

よくある質問

Q. 無料版のChatGPTに請求書の内容を貼り付けても問題ありませんか?
取引先名や個人名を含むなら、そのままでは避けてください。2026年9月時点のOpenAIの公表ポリシーでは、API・ChatGPT Business・Enterprise・Edu は入力と出力を既定でモデルの学習に使わない一方、個人向けプラン(Free・Go・Plus・Pro)は設定で学習への利用をオフにするまで学習に使われうる扱いです。有料でも個人向けプランなら同じ扱いである点に注意してください。個人情報保護委員会は、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合、個人情報保護法違反となる可能性があると注意喚起しています。取引先の担当者名が入った請求書は個人データです。法人契約に切り替えるか、社名・氏名・金額を外した形にしてから使ってください。
Q. 勘定科目や税区分の判断をChatGPTに聞いて、その通りに処理してよいですか?
判断の材料として読むのは構いませんが、根拠を確認せずに帳簿へ反映するのは避けてください。生成AIは事実と異なる内容をもっともらしい文章で返すことがあり、改正のあった制度ほど古い前提で答えが返ります。加えて、税務相談は税理士業務のひとつで(税理士法第2条第1項)、税理士・税理士法人以外が行うことは禁じられています(同法第52条)。ChatGPTの回答は一次情報の当たりをつけるために使い、最終的には国税庁の公表資料で確認し、判断が分かれる論点は顧問税理士に確認してください。帳簿の内容に責任を負うのは自社であり、AIが出したことは理由になりません。
Q. 証憑をChatGPTにアップロードして読み取らせれば、電子帳簿保存法の対応になりますか?
なりません。電子帳簿保存法の保存要件は、訂正削除の履歴が残るか等の真実性の確保と、日付・金額・取引先で検索できること等の可視性の確保を求めています。ChatGPTの会話履歴はこれらを満たす保存場所として設計されていません。読み取りの下書きに使うのは自由ですが、証憑そのものは要件を満たすシステムやストレージに別途保存してください。要件そのものは電子帳簿保存法施行規則が定めており、実務上の解釈は国税庁の電子帳簿保存法一問一答にまとまっています。