月次決算とは?年次決算との違いと経営に効く使い方
執筆: 4649編集部
月次決算とは、1か月ごとに帳簿を締め、各勘定科目の残高を通帳や請求書と突き合わせ、調整仕訳を入れて、その月の損益と財政状態を確定させる作業です。年次決算が会社法と法人税法で義務付けられた外部向けの報告であるのに対し、月次決算は会社が任意で行う内部向けの実務で、書式も期限も会社が決めます。義務ではないのに多くの会社が行うのは、年に1回の決算では経営判断が最大11か月遅れ、帳簿の誤りも同じだけ放置されるからです。
この記事は、年次決算との違い、法令上の位置づけ、経営での使い方の順に、用語解説として短くまとめました。締めの流れやチェックリスト、早期化の手順は月次決算 完全ガイドに譲ります。
月次決算とは:試算表を「出す」ことではなく「確定させる」こと
会計ソフトを使っていれば、試算表は月末の翌日にでも出力できます。しかし出力しただけの試算表は、売掛金の残高が請求書の控えと合っているか、年払いの保険料が当月分だけ費用になっているかを保証しません。月次決算は、この試算表を確定させるための3つの作業を指します。
1つ目は残高照合。預金は通帳の月末残高と、売掛金は得意先別の請求・入金記録と、買掛金は仕入先別の請求書と突き合わせ、差額の理由を説明できる状態にします。2つ目は調整仕訳。年払いの前払費用の月割、請求書が未着の電気代の見積計上、減価償却費の月割といった、放っておくと年に1回しか動かない取引を当月に割り付けます。3つ目は増減の確認。前月・前年同月・予算と比べ、動きの大きい科目に理由を付けます。
この3つを経て初めて、その月の粗利率や営業利益は「読んでよい数字」になります。
年次決算との違い:義務・相手・書式・期限
| 観点 | 年次決算 | 月次決算 |
|---|---|---|
| 法令上の位置づけ | 義務。会社法第435条が各事業年度の計算書類の作成を、法人税法第74条が事業年度終了の日の翌日から2か月以内の確定申告を定める | 任意。義務付ける法律はない |
| 数字を見る相手 | 株主・税務署・金融機関など社外 | 経営者・部門責任者など社内 |
| 書式 | 貸借対照表・損益計算書など会社計算規則で定められた様式 | 会社が決める。試算表と月次レポートが一般的 |
| 期限 | 事業年度終了後2か月以内の申告が基本 | 会社が決める。翌月5営業日前後を目標にする会社が多い |
| 精度 | 実地棚卸・引当・税務調整まで含めた確定値 | 概算の棚卸や見積計上を含む管理用の数字 |
違いの本質は、年次決算が「過去1年を外に報告する」作業で、月次決算が「今月を社内で見て手を打つ」作業だという点にあります。だから月次決算は、数字の正確さを税務申告の水準まで求めません。求めるのは正確さより速さと継続性。翌月25日に出る精緻な数字より、翌月5営業日に出る概算の数字のほうが、経営判断には役に立ちます。毎月残高が合っていれば、年次の決算整理も12月目の締めと大差ない作業になります。
義務ではないが根拠はある:会社法第432条と中小会計要領
「任意」は「根拠がない」ではありません。会社法第432条は、株式会社に「適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない」と定めています。中小企業庁が公表する中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)(平成24年2月1日・中小企業の会計に関する検討会)も総論で、経営者が自社の経営状況を適切に把握するために記帳が重要だとしたうえで、すべての取引について正規の簿記の原則に従い、適時に、整然かつ明瞭に、正確かつ網羅的に会計帳簿を作成することを求めています。
月ごとに帳簿を締めて残高を確かめる月次決算は、この「適時・正確」を実務で担保する最も普通の手段です。
経営に効く使い方:粗利率・資金・金融機関の3場面
月次決算の目的は締めることではなく、数字を見て手を打つことです。効く場面は3つに絞れます。
粗利率の変化を翌月上旬に知る。 売上高 8,000,000円・売上原価 5,200,000円の月なら粗利率は35%。翌月、売上が同じで原価が 5,600,000円に増えれば30%です。5ポイントの低下を翌月上旬に知れば、仕入単価の交渉か値上げか商品構成の見直しかを、その月のうちに決められます。
損益と資金のずれを月ごとに見る。 売上が伸びた月ほど、仕入代金の支払いが先に出て、売掛金の回収は後から来ます。損益計算書が黒字でも、月末の預金残高と翌月の入出金予定を毎月並べておかなければ、資金が詰まる月は見えません。
金融機関に月次の試算表を出せる体制をつくる。 経営者保証に関するガイドライン(経営者保証に関するガイドライン研究会が平成25年12月に策定した、中小企業団体・金融機関団体共通の自主的な準則)は、金融機関が経営者保証を求めない融資を検討する要件として、法人と経営者の関係の明確な区分・分離、財務基盤の強化、財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示の3つを挙げています。3つ目は、月次の試算表を出せる体制がなければ満たしようがありません。
月次決算を始めるなら:最初に決める3つ
決めるのは3つです。1つ目は資料の締め日。「翌月2営業日までに領収書・請求書・経費申請を経理へ」を全社ルールにします。月次決算が遅れる会社の大半は、締め後の作業ではなく、資料が揃うまでの待ち時間で日程を失っています。2つ目は担い手。顧問の会計事務所が試算表まで作っているなら、その体制を変える必要はありません。締めの作業量が社内にも事務所にも収まらなくなったら、残高照合・調整仕訳・増減分析・レポート作成という作業部分を経理代行に切り出し、事務所には確認と税務判断に集中してもらう分担があります。当社の4649月次決算はこの作業部分を担うメニューで、記帳は自社や会計事務所が行い、締めだけを任せる使い方ができます。3つ目は経営者が見る数字。損益の推移、増減の要因、資金の状態の3枚に絞り、読む時間を毎月固定します。
残高照合の科目別の手順と21項目のチェックリストは月次決算 完全ガイドに載せています。
月次決算とは、年次決算を12分割した社内向けの実務で、義務ではないが会社法第432条と中小会計要領に根拠のある、帳簿の適時性を担保する手段です。効くのは粗利率、資金、金融機関対応の3場面。正確さより速さと継続性を優先し、翌月5営業日に概算でも数字が出る状態を目指してください。
なお、引当金や短期前払費用の税務上の取扱いなど、個別の税務判断は税理士の業務です。自社のケースで迷うときは、顧問税理士にご相談ください。
よくある質問
- Q. 月次決算をしないと法律上の問題がありますか?
- 月次決算そのものを義務付ける法律はありません。ただし会社法第432条は株式会社に「適時に、正確な会計帳簿を作成」することを求めており、中小企業庁が公表する中小会計要領も、すべての取引について適時に、正確かつ網羅的に会計帳簿を作成することを求めています。月ごとに帳簿を締める運用は、この「適時」を実務で満たす最も普通の手段です。年に1回まとめて記帳する会社は、義務違反かどうかより先に、誤りの発見が最大1年遅れる点を問題として捉えてください。
- Q. 月次決算と月次試算表は同じものですか?
- 違います。試算表は会計ソフトからいつでも出力できる集計表で、残高が合っているかどうかは保証しません。月次決算は、その試算表の各科目の残高を通帳や請求書などの帳簿の外の資料と突き合わせ、前払費用や減価償却費などの調整仕訳を入れて、数字を確定させる作業です。照合と調整を経ていない試算表は、月次決算の結果ではなく、途中経過です。
- Q. 顧問の会計事務所に記帳を任せていても、月次決算は自社でやる必要がありますか?
- 会計事務所が月次の試算表まで作成している会社は、その体制のままで構いません。事務所は税務の観点で科目や処理を確認する存在で、申告と税務判断は事務所の領域です。会社側で担うべきなのは、資料を月初の決まった日までに事務所へ渡すことと、戻ってきた数字を読んで手を打つことの2つです。試算表が翌月半ばを過ぎても戻らない場合、原因の大半は資料が事務所に届く日にあります。分担を変える前に、渡す日を変えてください。