会計事務所の繁忙期対策:12月〜3月を乗り切る業務設計
執筆: 4649編集部
会計事務所の繁忙期は、職員の頑張りが足りないから起きるのではありません。年末調整、法定調書、償却資産申告、所得税の確定申告という期限が法令で固定された仕事が12月から3月の4か月に集中し、その上に毎月の記帳と月次がいつも通りの量で載る構造で起きます。期限は動かせない。動かせるのは、期限のある仕事をどこまで前に出すか、期限のない仕事を誰が回すか、そして資料がいつ来るかの3つです。
この記事は、2026年12月から2027年5月までの期限を一次ソースで確認したうえで、この3つを10月から順に設計する手順と、そのまま使える繁忙期業務設計シートをまとめました。人手不足の構造そのものは会計事務所の人手不足対策に、記帳を外に出すときの品質と採算は会計事務所が記帳業務を外注するという選択肢に書いたので、本記事はその2本を「繁忙期」という時間軸で組み直したものとして読んでください。
繁忙期は「期限が4か月に集中する」構造で起きる
何がいつ締まるのかを、一次ソースで並べます。2026年12月から2027年5月までの主な期限です。曜日の関係で年ごとに日付がずれるので、年末に各機関の案内で確認してください。
| 期限 | 業務 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2026年12月(その年最後の給与の支払時) | 年末調整 | 令和8年分 年末調整のしかた(国税庁) |
| 2027年1月20日(水) | 納期の特例を受けている場合の、7〜12月分の源泉所得税の納付 | No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例(国税庁) |
| 1月31日(2027年は日曜日のため翌日の2月1日(月)) | 法定調書(給与所得の源泉徴収票、各種支払調書、法定調書合計表)の提出 | 法定調書の種類及び提出期限(国税庁) |
| 同上 | 給与支払報告書の市区町村への提出 | 地方税法第317条の6 |
| 同上 | 償却資産申告書の提出 | 固定資産税(償却資産)(東京都主税局) |
| 2027年2月16日(火)〜3月15日(月) | 所得税の確定申告 | No.2020 確定申告(国税庁) |
| 2027年3月31日(水) | 個人事業者の消費税の確定申告 | No.6601 申告と納税(国税庁) |
| 2027年5月31日(月) | 3月決算法人の法人税の確定申告(事業年度終了の日の翌日から2か月以内) | 法人税法第74条 |
2027年に特に注意が要るのは法定調書です。法定調書のe-Tax等による提出義務化の概要(国税庁 e-Tax)にあるとおり、2027年(令和9年)1月1日以後に提出する法定調書から、e-Tax・光ディスク等・認定クラウドサービス等による提出が義務になる基準が、法定調書の種類ごとに「前々年の提出枚数100枚以上」から「30枚以上」に下がります。これまで紙で出していた顧問先も対象になりえます。該当の有無は、1月に紙で作ってから気づくのではなく、10月のうちに数えておいてください。
この表の業務の多くは、期限が法令で決まっているうえに、申告書の作成や税務上の判断という、税理士法第2条第1項の税理士業務にあたる中核部分を含みます(源泉所得税の納付そのものは納付行為で、これには当たりません)。同法第52条により、税理士・税理士法人でない外部の事業者に任せることはできません。他の税理士・税理士法人に委託する道は残りますが、繁忙期に受け皿を新たに用意するのは現実的ではありません。ところが同じ4か月に、顧問先の記帳、残高照合、月次の締めという期限のない仕事と、資料の回収・入力という事務作業が、いつも通りの量で同じ人に載ります。12月分の記帳が終わらないまま確定申告が始まり、1月分と2月分の記帳が4月に繰り越される。繁忙期の残業を分解すると、期限業務そのものより、押し出された記帳と月次の遅れのほうが大きい事務所は珍しくありません。
動かせるのは期限ではなく、期限のない仕事のほう
期限業務は減らせず、その中核部分は税理士・税理士法人以外に出せません。だから設計の対象は、その周りにある3つになります。
- 前倒し: 期限業務のうち、期限前に終えられる部分を10〜11月に前に出す
- 担い手の分離: 記帳・月次・入力を、期限業務を持つ人から切り離す
- 資料の締め日: 顧問先から資料が来る日を、事務所の都合で決める
この3つをやらずに残業で吸収する設計には、法律上の上限があります。厚生労働省の時間外労働の上限規制では、時間外労働は原則として月45時間・年360時間まで。特別条項があっても、月45時間を超えられるのは年6か月までです。12月から3月まで4か月連続で超え、5月の3月決算でも超えれば、それだけで年6回の枠の大半を使います。協定の運用の個別判断は社会保険労務士にご確認ください。以下、3つの設計を時系列で書きます。
10月〜11月:期限業務のうち、前に出せる部分を前に出す
年末調整は、12月に残す作業を「最終給与の反映と精算」だけにする。 国税庁の令和8年分 年末調整のしかたは8月末に公開されています。改正点の読み合わせを10月に済ませ、顧問先には回収する書類の一覧と締め日を10月末までに送る。控除申告書の配布・回収と記載内容のチェックは、12月の給与計算の前に終えられる作業です。12月に入ってから書類を集め始める顧問先の社数が、12月後半の残業時間を決めます。
法定調書と給与支払報告書は、対象者リストと前々年の提出枚数を10月に作る。 支払調書の金額は12月まで確定しませんが、対象者の一覧、前々年の提出枚数、前のセクションで書いた30枚基準の該当有無は10月時点で分かります。数えるのは前年ではなく前々年です。2027年1月に提出する分の判定は、2025年(令和7年)中に提出すべきであった枚数で行います。e-TaxとeLTAXの利用者識別番号や電子証明書の有効期限の確認もこの時期です。1月に電子証明書が切れていて紙に戻る事故は、繁忙期に一番起きてほしくない種類の事故です。
償却資産申告は、固定資産台帳が月次で更新されているかで作業量が決まる。 台帳が月次で更新されている顧問先なら、1月の作業は12月分の取得・除却を足すだけ。年に1回まとめて整備している顧問先は、11月のうちに前年の申告書控えと今年の取得・除却の資料を突き合わせておく。台帳と会計のズレが11月に見つかれば直す時間があります。1月に見つかれば、ありません。
確定申告は、顧問先を「資料が揃う時期」で3群に分ける。 A群は12月に資料が揃う顧問先。給与と数件の控除、定型の不動産所得など、1月中に申告書を作って2月16日に提出できる群です。B群は事業所得があり、記帳を事務所が担っている顧問先。12月分の記帳が終わった時点で決算整理に入れるので、1月中に記帳を終えるかどうかで2月の負荷が決まります。C群は資料が2月に来る顧問先。C群の社数が、3月前半の残業時間をそのまま決めます。 11月に前年の資料到着日を顧問先別に並べ、C群を1社ずつAかBに移す交渉を、契約更新や年末の挨拶に合わせて行う。全社を移す必要はなく、C群が10社減れば3月前半の10社分の夜が消えます。
12月〜3月:記帳と月次を、期限業務を持つ人から切り離す
12月から3月に最も崩れやすいのは、確定申告を担当する経験者が、同じ顧問先の記帳と月次も抱えている体制です。期限業務が優先されるのは当然で、その結果として記帳が止まる。止まった記帳は4月にまとめて処理され、4月の月次が遅れ、5月の3月決算に食い込みます。
対策は、記帳と月次の担い手を、期限業務を持つ人から分けることです。事務所の中で分けるなら、主担当が確定申告に入る間、副担当(パート・在宅の職員を含む)が記帳の一次処理を続ける体制にします。判断に迷う仕訳は、顧問先ごとの処理メモ(取引件数の多い取引先と科目・税区分、資料の来方、過去に揉めた論点をA4で1枚)を見て処理し、それでも迷うものは溜めて週1回まとめて主担当に聞く。そのうえで、期限のない仕事に事務所内の期限を切ります。「12月分の記帳は1月20日までに終える」「1月分は2月20日まで」。これが繰り越しを止める唯一の方法です。
事務所の外に出すなら、繁忙期の前に始めてください。外注の採算は顧問先1社ごとの損益分岐単価で決まり、内製の人件費が繁閑にかかわらず固定なのに対して、外注費は仕訳数に応じた変動費です。この計算は記帳外注の記事に式と採算シートを載せました。繁忙期との関係で付け加えるなら、12月に初めて委託先を使うのは最も失敗しやすい形だということです。処理メモを作り、質問の回答ルールを合わせ、納品物の根拠の形を確かめる時間は、繁忙期の中にはありません。10〜11月に、資料が電子で揃う顧問先を2〜3社選んで始め、事務所側の確認時間と差し戻し件数を測る。1月には処理メモが揃い、確認が「根拠を読む」作業になった状態で繁忙期に入るのが、順番として正しい形です。
当社の会計事務所向け 4649経理代行は、この会計業務の層を事務所のバックヤードとして担う形です。記帳・月次決算・仕訳チェック・経費チェック・固定資産・納品突合の6メニューから1社・1メニューでも使え、顧問先との窓口は事務所のまま。料金は顧問先から受け取る報酬の一定割合を当社の料金として確定する粗利保証型で、お預かりしたデータをAIの学習に使うことはありません。判断が必要だった仕訳には根拠コメントを添えて納品します。4649記帳代行では、従来2週間かかっていた記帳作業が1日に短縮された事例があります(※実際のご利用者様の事例です。納期は業務内容やボリュームにより異なります)。12月分の記帳が1月上旬に戻ってくれば、B群の顧問先の決算整理を1月中に始められます。
顧問先から資料が来る日を、事務所の都合で決める
繁忙期の督促は、事務作業のうち最も時間を食い、かつ最も税理士本人に載りやすい仕事です。顧問先が電話に出る相手は担当の税理士だからです。12月に来なかった年末調整の書類を1月に追いかける時間は、1月20日と、1月31日(2027年は2月1日)の期限業務の時間からそのまま削られます。
対策は「資料の来る日」を顧問先別に決めることです。月次の証憑は翌月10日まで、年末調整の書類は11月末まで、確定申告の資料は1月20日まで、というように。ただし決めるだけでは来ないので、3つを合わせます。
前年の到着日を顧問先別に記録し、遅い上位10社に絞って交渉する。 全顧問先に一斉に依頼文を送っても、遅い顧問先は遅いままです。前年に一番遅かった10社を選び、契約更新や年末の面談で渡し方と締め日を個別に合意する。督促の時間の大半は、その10社に使われています。
渡し方を変える。 紙の領収書が封筒で届く顧問先は、スマートフォンで撮影して所定のフォルダかチャットへ。銀行・カード明細はデータ連携に切り替える。届く日も、届いてからの入力時間も変わります。
「揃ってから」を「あるものから」に変える。 顧問先が「全部揃えてから送ろう」と考えると、2月末になります。前年の申告書控えから必要書類の一覧を事務所側で作って12月に渡し、データで取れるものは1月上旬、証憑類は1月末、と段階的に締め日を置く。年末調整も同じで、回収書類のチェックリストを配れば「あれもこれも」の往復が減ります。
顧問先×期限×担当を、1枚で見る
繁忙期に崩れる事務所に共通するのは、進捗が担当者の頭の中にあることです。誰がどの確定申告に着手していて、どこが資料待ちなのかが所長にも見えない。見えないと、応援を回す判断が3月10日になります。
顧問先×期限業務のマトリクスを1枚作り、状態を「未着手 / 資料待ち / 作成中 / 確認待ち / 提出済」の5つで持ちます。更新は週1回15分。毎週見るのは、資料待ちが多い顧問先(今週の督促先)、担当者別の「作成中」の件数(偏り)、3月1日時点で「未着手」の確定申告(応援を回す先)の3つだけです。表計算ソフトで足ります。担当者別の工数と顧問先ごとの採算まで一体で見るなら、事務所管理ソフトウェアを使う選択肢もあります。当社もこの領域で事務所管理AIを開発していますが、現時点では未提供で、公開・ベータ募集に向けた事前登録を受け付けている段階です。
テンプレート:繁忙期業務設計シート
以下を表計算ソフトに貼り付けて使ってください。期限の列は2026年12月〜2027年5月の日付で埋めてあります。「対象顧問先数」「担当」「繁忙期中の記帳・月次の担い手」を事務所の実態で埋めると、どの期限に人が足りず、どの期限の前倒しが効くかが見えます。
| 期限業務 | 期限(2026年12月〜2027年5月) | 対象顧問先数 | 担当(税理士・経験者) | 前倒し着手月 | 顧問先の資料締め日 | 繁忙期中の記帳・月次の担い手 | 状態 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 年末調整 | 2026年12月の最終給与 | 10月(改正点の読み合わせ・案内送付) | 11月末 | ||||
| 納期の特例(7〜12月分)の納付 | 1月20日(水) | 12月(対象顧問先の一覧) | ― | ||||
| 法定調書・給与支払報告書 | 2月1日(月)※1月31日が日曜日 | 10月(対象者リスト・30枚基準の判定・電子証明書) | 1月10日 | ||||
| 償却資産申告 | 2月1日(月)※同上 | 11月(台帳と前年申告書の突合) | 12月末 | ||||
| 確定申告 A群(12月に資料が揃う) | 2月16日(火)に提出 | 1月(申告書作成) | 12月末 | ||||
| 確定申告 B群(事務所が記帳) | 3月15日(月) | 1月(12月分記帳の完了 → 決算整理) | 1月20日 | ||||
| 確定申告 C群(資料が2月以降) | 3月15日(月) | 11月(A・B群への移行交渉) | 1月末(段階提出) | ||||
| 個人事業者の消費税申告 | 3月31日(水) | 確定申告と並行 | ― | ||||
| 3月決算法人の申告 | 5月31日(月) | 4月(1〜3月分の記帳を繰り越さない) | 4月10日 |
使い方は5段階です。
- 「対象顧問先数」を埋める。確定申告は前年の資料到着日でA・B・Cに分ける。C群の社数が、そのまま3月前半の負荷です
- 「担当」に名前を入れる。同じ名前が年末調整・法定調書・確定申告・記帳に並んだら、その人が12月〜3月に崩れます
- 「繁忙期中の記帳・月次の担い手」に、担当と別の名前(副担当・パート・委託先)を入れる。同じ名前しか入らない行が、担い手の分離を先にやるべき行です
- 「顧問先の資料締め日」を、前年に遅かった上位10社から個別に合意する
- 「状態」列は12月第1週から週1回、5段階(未着手 / 資料待ち / 作成中 / 確認待ち / 提出済)で更新する
4月にやること:来年の設計は、繁忙期の翌月に決まる
繁忙期が終わった4月に、4つの数字を残してください。担当者別の12月〜3月の時間外労働、4月に繰り越した記帳の顧問先数と月数、C群の社数、顧問先別の資料到着日。この4つがあれば、10月の設計は「去年の数字を1つずつ減らす」作業になります。記録がなければ、来年もまた12月に同じ場所から始まります。
繁忙期対策は、期限業務を速くこなす工夫ではなく、その周りにある「期限のない仕事」と「資料の来る日」を事務所の側で設計し直すことです。前倒し、担い手の分離、資料の締め日。この3つは繁忙期に入ってからでは手が付けられません。10月に始めてください。
なお、本記事は事務所運営の一般論であり、各申告の期限や要件の個別の適用、労働時間に関する協定の運用は、所属の税理士会・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。
よくある質問
- Q. 繁忙期の間だけ、記帳を外部に出すことはできますか?
- 委託先によっては可能ですが、繁忙期に入ってから初めて委託先を使うのは最も失敗しやすい形です。顧問先ごとの科目・税区分の癖を書いた処理メモを作り、委託先と質問の回答ルールを合わせる時間が、12月以降の事務所にはないからです。10〜11月に、資料が電子で揃う顧問先を2〜3社選んで始め、事務所側の確認時間と差し戻し件数を測ったうえで繁忙期に入ってください。当社の会計事務所向けプランも1社から試せる形にしていますが、始める時期は繁忙期の前をおすすめしています。
- Q. 36協定に特別条項を付けていれば、繁忙期の残業は問題ありませんか?
- 厚生労働省の時間外労働の上限規制では、特別条項があっても、月45時間を超えられるのは年6か月まで、時間外労働は年720時間以内、休日労働を含めて複数月平均80時間以内・単月100時間未満という上限が適用されます。12月から3月の4か月と5月で45時間を超えると、年6回の枠の大半を繁忙期だけで使うことになります。協定の締結や運用の個別判断は社会保険労務士または労働基準監督署にご確認ください。本記事で言えるのは、残業で吸収する設計は年に使える回数が法律で決まっている、ということまでです。
- Q. 確定申告の資料が毎年2月末にならないと届かない顧問先には、どう対応すればよいですか?
- 「揃ってから送る」を「あるものから送る」に変えるのが先です。前年の申告書控えを見れば、その顧問先に必要な資料の一覧は事務所側で作れます。一覧を12月に渡し、通帳やカード明細のようにデータで取れるものは1月上旬、証憑類は1月末、と段階的な締め日を設けてください。それでも2月末になる顧問先は、その社数が事務所の3月前半の残業時間を決めます。契約更新のタイミングで資料の渡し方を合意事項にするか、月次で記帳を受けて決算整理だけを残す形に変えるかを、顧問先ごとに判断してください。