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月次決算

経過勘定の仕訳:4科目の使い分けと前払金・未払金との違い

執筆: 4649編集部

経過勘定は、お金が動いた時点役務の提供を受けた(した)時点がずれる取引で、損益を発生した月に付け替えるための勘定です。科目は4つ。前払費用と前受収益は、お金が先に動いて役務はこれからの「繰延べ」。未払費用と未収収益は、役務が先に済んでお金はこれからの「見越し」。仕訳は、この4分類のどこに当たるかを決めれば自動的に決まります。

迷いが出るのは仕訳そのものではなく、前払金・未払金・前受金・未収入金という似た科目との使い分けと、計上した残高が翌月以降に合わなくなる場面です。この記事では、4科目の仕訳例、未決済項目との判定基準、月次で使う経過勘定管理表のテンプレート、残高が崩れる5つのパターンをまとめました。月次決算全体の流れは月次決算 完全ガイドに、締めた後の残高の確かめ方は残高照合のやり方に載せています。

経過勘定の4科目:繰延べ2つと見越し2つ

中小企業庁の「中小企業の会計」ツール集は、「経過勘定等」は、どのように取り扱いますか?で、前払費用・前受収益は翌期以降に役務の提供を受けた(した)時点で費用・収益になるため当期の損益に含めず、未払費用・未収収益は当期にすでに役務の提供を受けて(して)いるため当期の損益に反映する、と整理しています。月次決算では、この「当期」を「当月」に読み替えます。

科目B/S の区分お金役務代表的な取引
前払費用資産(繰延べ)支払済みこれから受ける年払いの保険料・保守料、前払いの家賃
前受収益負債(繰延べ)受取済みこれから提供する年額前受のサブスク利用料、受取家賃
未払費用負債(見越し)未払いすでに受けた月末締め翌月払いの給与、当月の電気代、借入金の未払利息
未収収益資産(見越し)未入金すでに提供した後払い契約の役務提供済み分、受取利息

対になっているのは、費用と収益ではなく自社が払う側か受け取る側かです。年間保守料を払う側は前払費用、同じ契約を受け取る側は前受収益。月末締め翌月払いの取引は、払う側が未払費用、受け取る側が未収収益。相手の帳簿を想像すると、どの科目かは迷わなくなります。

4科目の仕訳例:計上・月割・反転

前払費用:資産に載せ、毎月取り崩す

4月に年間の保守料 240,000円(税込・課税取引)を一括で支払い、契約期間が4月から翌年3月までの場合。支払時に全額を費用にすると、4月だけ費用が膨らみ、5月以降はゼロになります。

4月(支払時)   前払費用 240,000 / 普通預金 240,000
4〜翌3月(毎月) 支払手数料 20,000 / 前払費用  20,000

毎月の振替先の科目は、支払手数料でも業務委託費でも自社の経理規程に従えば構いません。揃えるべきは、12か月とも同じ科目にすることです。月によって科目が変われば、前月比の分析が成り立ちません。なお、決算日の翌日から1年を超えて費用になる部分は、長期前払費用として投資その他の資産に区分します。2年契約を一括前払いしたときが典型です。

未払費用:見積りで計上し、翌月に反転する

月末時点で請求書が届いていない電気代を、前月実績の 30,000円で見積計上する場合。

当月末   水道光熱費 30,000 / 未払費用   30,000
翌月初   未払費用   30,000 / 水道光熱費 30,000(反転仕訳)
翌月     水道光熱費 31,450 / 普通預金   31,450(請求額で通常計上)

反転仕訳を入れておけば、届いた請求書は何も考えずに通常どおり計上できます。見積額 30,000円と実額 31,450円の差 1,450円は、翌月の費用として自動的に吸収されます。反転を使わずに未払費用と請求額を直接相殺する方法だと、差額の 1,450円をどちらの月に付けるかを毎回判断することになり、担当者が替わった月に処理が変わります。月末締め翌月払いの給与も同じ構造で、当月末に給与手当と未払費用を立て、翌月の支払時に反転します。

前受収益:受け取った時点では収益にしない

自社が年額 240,000円のサービス利用料を4月に前受けし、4月から翌年3月まで提供する場合。払う側の裏返しです。

4月(入金時)   普通預金 240,000 / 前受収益 240,000
4〜翌3月(毎月) 前受収益  20,000 / 売上高    20,000

年額前受のプランを持つ会社で、入金月に全額を売上に立てると、その月だけ売上高が跳ね上がり、契約が集中する月とそうでない月の比較ができません。月次で提供期間に按分しておけば、月次推移がサービスの実態に合います。

未収収益:提供済みで、請求権がまだ確定していない分

当月分の役務をすでに提供し、契約上の支払期日が翌月以降に来るもの。たとえば当月21日から末日までに提供した業務委託分 180,000円が、翌月20日締めの請求に載る場合です。

当月末   未収収益 180,000 / 売上高   180,000
翌月初   売上高   180,000 / 未収収益 180,000(反転仕訳)

ここで気をつけたいのが、売掛金との境目です。商品を売った、業務が完了して請求書を発行した、という営業取引の債権は売掛金で処理します。未収収益は、継続的な契約で期間が経過しただけで、まだ請求が立っていない分です。請求書を出した瞬間に売掛金へ振り替わると考えてください。月次で未収収益と売掛金の両方に同じ取引が載る二重計上は、この振替を忘れたときに起きます。

前払金・未払金・前受金・未収入金との違い

4科目の仕訳より間違いが多いのが、名前のよく似た未決済項目との使い分けです。企業会計原則注解【注5】は経過勘定項目を「一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける(行う)場合」の未経過分・既経過分と定義し、役務の提供契約以外の契約による前払金・未払金とは区別しなければならない、としています。判定の軸は2つだけです。

  1. 継続的な役務の提供契約か(1回限りの取引・物の売買ではないか)
  2. 期間の経過に応じて費用・収益になるか(日割・月割で割り切れるか)

両方に当てはまれば経過勘定、どちらかが外れれば未決済項目です。

経過勘定未決済項目分かれ目
前払費用(年間保守料、家賃、保険料)前払金・前渡金(機械購入の手付金、制作物の着手金)期間で按分できるか、成果物単位か
未払費用(当月の電気代、未払給与、未払利息)未払金(固定資産の購入代金、単発の修繕費)継続契約の既経過分か、単発取引の代金か
前受収益(年額前受の利用料、受取家賃)前受金(受注品の手付金)提供期間があるか、納品して終わりか
未収収益(受取利息、提供済みの継続役務)未収入金(固定資産の売却代金)継続契約の既経過・未請求分か、役務提供契約以外による債権か

判定に迷ったときの実務的な基準は、期間の経過そのものに応じて役務が提供され続けるかです。言い換えると、契約期間のどこで区切っても未経過期間分を日割・月割で金額として特定できるなら前払費用、成果物の完成・引き渡しでしか区切れないなら前払金です。1年分のドメイン更新料は使用できる期間が1年と決まっていて未経過分を月割で出せるので前払費用、Webサイト制作の着手金は納品まで役務が区切れないので前払金、と分かれます。解約時に残りが返金されるかどうかは目安のひとつにすぎず、判定の要件ではありません。解約返金のない年額契約でも、期間で按分できるなら前払費用です。

区別が要る理由は3つあります。第一に、前払費用だけが一年基準で長期前払費用に分かれ、貸借対照表の区分が変わること。第二に、消費税の課税仕入れ・課税売上の時期が資産の引き渡しや役務の提供の時であること(国税庁タックスアンサー No.6165「前受金や前払金などがあるとき」)。第三に、残高照合の相手が変わることです。前払費用は契約一覧と、前払金は発注書や見積書と照合します。混ざった残高は、どちらの資料とも合いません。

月次で使う経過勘定管理表のテンプレート

経過勘定が崩れる会社に共通するのは、契約の一覧がなく、毎月の振替仕訳を残高から逆算していることです。次の表を表計算ソフトに貼り、契約が増減したときだけ更新してください。毎月の仕訳は、この表の月額欄を転記するだけになります。記入例の「当月末残高」は、いずれも 2026年8月末時点の金額で揃えています。

契約名相手先科目契約期間契約総額月額計上開始月終了月当月末残高振替先科目備考
サーバー保守A社前払費用2026-04〜2027-03240,00020,0002026-042027-03140,000支払手数料年払い・4月支払済
火災保険B損保前払費用2026-07〜2028-06480,00020,0002026-072028-06440,000保険料24か月・長期分は長期前払費用へ
年額プランC社前受収益2026-06〜2027-05240,00020,0002026-062027-05180,000売上高6月入金済
電気代D電力未払費用継続実績見積30,000水道光熱費翌月初に反転
借入利息E銀行未払費用継続返済予定表8,000支払利息利息部分のみ

運用の決まりは4つです。契約を結んだ月と解約した月に、必ずこの表を更新する。月額欄と会計ソフトの定型仕訳を一致させる。当月末残高は、契約総額から計上済みの累計を引いた金額を書き、試算表の科目残高の合計と突き合わせる。終了月を過ぎた行は削除せず、残高ゼロのまま年度内は残す。

月額が固定される前払費用・前受収益は、会計ソフトの定型仕訳(自動仕訳)に登録してしまえば、月次の作業は「登録済みの仕訳を確認して確定する」だけになります。締めを縮める手順は月次決算を早期化する方法にまとめました。

経過勘定の残高が合わなくなる5つのパターン

残高照合で経過勘定の差額が出たときは、仕訳を全部見る前にこの5つを当ててください。

症状原因直し方
前払費用が毎月同じ額ずつ増えていく支払時に資産計上したまま、月割の振替仕訳が動いていない定型仕訳の登録漏れ。計上開始月まで遡って不足分をまとめて振り替える
契約が終わったのに前払費用が残る解約・満了の反映漏れ。管理表を更新していない残額を当月の費用に振り替える。金額が大きければ経営者に報告
未払費用が月をまたいで積み上がる反転仕訳を入れずに請求書を通常計上し、見積分が二重に残っている前月の見積計上を当月に反転し、以後は反転運用に統一する
前払費用の残高が端数でずれる契約総額が月数で割り切れず、毎月の端数が累積している最終月で調整する、または初月で端数を吸収する。どちらかを社内で固定
未収収益と売掛金に同じ取引が載っている請求書発行時に未収収益から売掛金へ振り替えていない請求月に未収収益を反転し、売掛金で計上し直す

いちばん多いのは1行目です。支払時の仕訳は通帳を見れば必ず起票されますが、毎月の振替仕訳はそれを促す証憑がありません。だから止まります。管理表と定型仕訳の登録は、この「証憑のない仕訳」を忘れないための仕組みです。

税務との線引き

月次で費用を月割にすることと、年次の申告でどう扱うかは別の論点です。法人税では、支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係る前払費用について、支払った額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金に算入しているときは、損金算入が認められています(国税庁タックスアンサー No.5380「短期前払費用として損金算入ができる場合」)。ただし、借入金を預金や有価証券で運用する場合の支払利子のように、収益と対応させる必要があるものは、1年以内でも支払時の損金算入は認められません。

自社の契約がこの取扱いの対象になるか、月次では月割にしつつ申告では支出時の損金にするのか、その方針を採るかどうかは税務判断であり、税理士の業務です。月次の月割ルールを決めるときに、年次の処理と矛盾しないかを顧問の会計事務所に確認しておけば、決算での手戻りはなくなります。

経過勘定の計上そのものは、契約一覧と定型仕訳があれば月に数十分で終わる作業です。逆に、契約一覧がないまま残高から逆算する運用が続くと、決算で「この前払費用の中身が分からない」が起きます。締めの作業量が社内にも事務所にも収まらなくなったときは、残高照合・調整仕訳・月次レポートの作成という作業部分を切り出す分担があります。当社の4649月次決算はこの作業部分を担うメニューで、記帳は自社や顧問の会計事務所が行い、締めだけを任せる使い方ができます。顧問契約を変える話ではなく作業の担い手を分ける話なので、事務所に相談したうえで決めてください。


経過勘定の仕訳は、繰延べ(前払費用・前受収益)か見越し(未払費用・未収収益)かを決めれば形が決まります。実務で効くのは仕訳の形ではなく、その前後です。継続的な役務かどうかで前払金・未払金と切り分ける。契約一覧を持ち、月額を定型仕訳に登録する。未払費用と未収収益は反転仕訳で戻す。この3つが回っていれば、経過勘定の残高は毎月1行の確認で済みます。

なお、短期前払費用の適用や消費税の課税期間の判定など、個別の税務判断は税理士の業務です。自社のケースで迷うときは、顧問税理士にご相談ください。

よくある質問

Q. 前払費用と前払金は何が違いますか?
契約が「一定の契約に従って継続的に役務の提供を受けるもの」かどうかで分かれます。1年分の保守契約やサブスクリプション、家賃、保険のように、期間の経過に応じてサービスを受け続ける契約の前払分は前払費用です。一方、機械の購入代金の手付金、単発の制作物の着手金のように、物の引き渡しや1回限りの役務に対して先に払ったものは前払金(前渡金)で、経過勘定ではありません。判定に迷ったら「契約期間のどこで区切っても、未経過期間分を日割・月割で金額として特定できるか」を見てください。期間の経過に応じて役務が提供され続けるなら前払費用、成果物単位でしか精算できないなら前払金です。解約時に返金されるかどうかは判定の要件ではなく、解約返金のない年額契約でも期間で按分できれば前払費用になります。
Q. 未払費用の反転仕訳(再振替仕訳)は必ず入れる必要がありますか?
必須ではありませんが、月次決算では反転仕訳を使う運用を推奨します。未払費用は見積りで計上し、翌月に実額の請求書が届きます。反転仕訳を入れずに請求書の金額を未払費用と相殺する方法だと、見積額と実額の差を毎回手で調整することになり、担当者によって処理がぶれます。翌月初に前月の見積計上をそのまま逆仕訳で戻し、届いた請求書を通常どおり費用計上すれば、差額の調整は不要になります。前払費用は反転仕訳を使わず、資産計上した金額を毎月の月割仕訳で取り崩します。
Q. 経過勘定の消費税はいつの課税期間で処理しますか?
消費税の課税仕入れ・課税売上の時期は、原則として資産の引き渡しや役務の提供があった時です。国税庁タックスアンサー No.6165「前受金や前払金などがあるとき」のとおり、代金の決済時期とは関係がないため、未払費用・未収収益は計上した課税期間で処理します。例外として、法人税・所得税で短期前払費用としてその年度の損金・必要経費に算入した前払費用は、支出した課税期間の課税仕入れとして扱われます。月次の管理上どう月割りするかと、消費税の申告でどの課税期間に入れるかは別の論点なので、自社の処理方針は顧問税理士に確認してください。