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経理代行・記帳代行

経理代行はどこまで丸投げできる?任せられる業務と残る業務

執筆: 4649編集部

経理代行に丸投げできるのは作業です。丸投げできないのは承認と法的責任です。記帳・支払データの作成・請求・経費精算・給与計算・月次決算まで、手を動かす部分はほぼ全部を外に出せます。一方で、支払の最終承認、送金の実行、税務申告、帳簿の保存義務は、どの会社に頼んでも自社に残ります。

この記事では、業務ごとに「どこまで出せて、自社に何が残るか」を一覧で判定し、残るものについてはなぜ残るのか——法律なのか、内部統制なのか、情報なのか——まで踏み込みます。最後に、丸投げ体制を実際に回すための月次カレンダーのテンプレートを載せました。

「丸投げ」には2つの意味がある

検索して出てくる「丸投げOK」という表記は、たいてい作業の丸投げを指しています。資料を整理せずに送っても受け付ける、フォーマットを揃えなくてよい、という意味です。ここは実際にほぼ丸投げできます。

もう 1 つの意味が判断と責任の丸投げです。こちらは外注先が引き受けたくても引き受けられません。誰にいくら払うかを決めるのは会社であり、税務申告の名義人も帳簿の保存義務者も会社だからです。委託先がやるのは「決めるための材料を揃え、決まったことを作業として実行する」ところまで。

この 2 つを分けずに検討すると、「丸投げできると言われたのに質問が来る」「振込まで全部やってくれると思っていた」というギャップが生まれます。判定の軸はシンプルで、手が動く業務は出せる、判子を押す業務は残るです。

業務別の丸投げ度:一覧で判定する

主要な経理業務を、外注できる範囲で 3 段階に分けました。◎はほぼ全部出せる、○は出せるが自社の一手が必要、×は法律上または実務上出せない業務です。

業務丸投げ度委託先に出せる範囲自社に残る一手
記帳(仕訳入力)証憑の読み取り、仕訳起票、会計ソフトへの入力判断に迷う取引への回答
月次決算残高照合、調整仕訳、増減分析、月次レポート数字を読んで経営判断に使う
経費精算のチェック領収書との突合、規程との照合、二重申請の検出規程の決定と例外の承認
請求業務請求書の発行、入金消込、未入金リストの作成、督促連絡(支払案内・入金確認まで)督促するかどうかの判断(回収交渉は弁護士の領域)
支払業務請求書の受領・内容確認・振込データの作成支払の最終承認と送金の実行
給与計算勤怠集計、給与計算、給与明細の発行支給額の承認、源泉所得税の納付
社会保険・労働保険の手続き×社労士へ依頼するか自社で対応
税務申告・税務相談×決算資料の整備まで税理士へ依頼
現金の実物管理×自社(そもそも小口現金を減らす)
帳簿・証憑の保存×データの受け渡しと保管の実務保存義務の主体、保管場所と提出責任の決定

◎の業務だけを見ると、経理の手作業の大半は外に出せることがわかります。記帳・月次決算・経費チェックは、証憑とデータさえ渡せば完結する業務だからです。逆に○と×が付く業務には、お金が動く瞬間か、資格が要る手続きか、会社にしかない情報が絡んでいます。

なお、記帳だけを切り出すのか、経理業務全般を出すのかで契約するサービスが変わります。この線引きは記帳代行と経理代行の違いで整理しています。

社内に必ず残る5つと、その理由

右列の「残る一手」のうち、法律や内部統制の要請でどの会社にも必ず残るのが次の 5 つです。残り(督促するかどうか、経費規程の例外を認めるか、数字をどう経営に使うか)は、会社ごとの運用上の判断として残るものです。必ず残る 5 つは理由が違えば対策も違うので、まとめて「自社対応」と扱わないでください。

1. 税務申告と税務相談(理由:法律)

税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士の独占業務です(税理士法第2条・第52条)。経理代行会社が引き受けられるのは、申告のもとになる決算資料を整えるところまで。個別取引の税務上の取扱いをどう判断するかも、税理士の領域です。

したがって丸投げ体制の完成形は「日々の経理実務=経理代行、税務判断と申告=顧問税理士」の併用になります。経理代行の導入は顧問契約を置き換えるものではなく、事務所には税務の判断に集中してもらい、手を動かす作業を経理代行会社が引き受けるという分担です。記帳まで会計事務所に依頼している場合は、事務所の体制や繁忙度も踏まえ、どこを事務所が担い続けるかを事務所と一緒に設計してください。

2. 支払の最終承認と送金の実行(理由:内部統制)

振込データの作成までは外注できます。しかし実行の承認と送金権限は社内に残すのが定石です。作成者と承認者が同一になった瞬間、誤払いと不正送金を止める仕組みが消えるからです。

実務では、ネットバンキングの参照専用 ID を委託先に発行し、送金実行の権限は渡さない構成にします(第三者への ID 発行が認められるかは金融機関の規定によるため、事前に確認してください)。承認は「請求書の画像・振込先・金額の一覧」を見て 1 件ずつ確認するだけなので、月 30 件程度なら 15 分ほどの作業です。ここを惜しむと、外注のコスト削減効果が 1 件の誤払いで吹き飛びます。

3. 源泉所得税の納付と社会保険手続き(理由:義務者が会社/資格が必要)

給与計算そのものは外注できますが、源泉徴収義務を負うのは給与を支払う会社です。差し引いた所得税および復興特別所得税は、原則として支払った月の翌月 10 日までに納付する必要があります(国税庁タックスアンサー No.2502「源泉徴収義務者とは」)。給与の支給人員が常時 10 人未満で納期の特例の承認を受けている場合は、1〜6 月分を 7 月 10 日、7〜12 月分を翌年 1 月 20 日にまとめて納付します(国税庁タックスアンサー No.2505「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」)。特例の対象は給与等・退職手当等・税理士等の報酬に限られ、それ以外の報酬から源泉徴収した分は毎月納付です。委託先は納付額の計算と納付書の作成まで支援できても、義務の主体は会社のままです。

社会保険・労働保険の手続き代行は社会保険労務士の独占業務です(社会保険労務士法第27条)。算定基礎届や労働保険の年度更新は、社労士に依頼するか自社で対応します。給与計算を丸投げする際は、「計算は経理代行、手続きは社労士」の境目を最初に確認してください。

4. 質問への回答(理由:情報が社内にしかない)

丸投げの成否を実際に決めているのは、この 4 つ目です。「この 5 万円の出金は何か」「この取引先への支払は前払か」——資料を読んでも判断できない取引は毎月必ず発生します。

質問への回答が 3 日滞れば、月次の締めも 3 日遅れます。回答担当者を 1 人決め、質問には 2 営業日以内に回答するを社内ルールにして月次スケジュールに組み込んでください。回答が早い会社ほど、丸投げの範囲を広げても業務が回ります。

5. 帳簿・証憑の保存(理由:法定義務の主体が自社)

法人の帳簿書類は原則 7 年間(青色申告で欠損金額が生じた事業年度は 10 年間)の保存が必要で(国税庁タックスアンサー No.5930「帳簿書類等の保存期間」)、この義務は外注しても自社に残ります。メールで受け取った請求書 PDF などの電子取引データは、電子帳簿保存法により電子のまま保存する必要があります(国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイト)。

資料を委託先に送りっぱなしにすると、義務を負う主体(自社)と資料の所在(委託先)がずれます。原本の保管場所、電子データの保存先、税務調査時に提出する責任者——この 3 点は契約時に文字で決めておいてください。

丸投げ体制を回す月次カレンダー(テンプレート)

丸投げは「渡して終わり」ではなく、月に数回の接点で回す運用です。月末締め・翌月 25 日支払、月間仕訳 100〜200 件・支払 30 件程度・従業員 10 名前後の会社を想定した基本形を置きます。日付は自社の締め日に合わせて読み替えてください。

タイミング自社がやること(所要目安)委託先がやること
随時(発生の都度)請求書・領収書をチャットやスキャンで送る(5 分/回)受領・仕訳起票
翌月 1〜3 営業日通帳データ・カード明細・勤怠データを共有(15 分)記帳、入金消込、経費突合
翌月 3〜5 営業日委託先からの質問に回答(30 分)質問リストの送付、回答反映
翌月 5〜7 営業日支払一覧を承認(15 分)支払データの作成、振込先の照合
翌月 10 日源泉所得税を納付(5 分)※納期の特例を受けている場合は 7/10・翌 1/20 の年 2 回納付額の計算、納付書の準備
翌月 7〜10 営業日月次レポートを確認、気になる増減を質問(30 分)残高照合、調整仕訳、月次レポート
翌月 25 日(支払日)送金を実行(5 分)※振込予約を使う場合は承認と同日でも可

締めの工程だけを足すと自社側は月 1 時間半前後、証憑を随時送る手間を含めても 2 時間程度。これが「丸投げしても残る関与時間」の現実的な水準です。部門別管理を行っている、承認階層が多い、といった会社ではこの 2〜3 倍を見込んでください。逆に言えば、この時間を確保できない体制で外注を始めると、質問が滞留して月次が止まります。

導入前に自社の現状を棚卸しする段階のチェックリストは経理代行 完全ガイドにまとめています。あわせて、外注のデメリットを契約条項でどう潰すかは経理アウトソーシングのメリット・デメリットを参照してください。

丸投げが破綻する3つの兆候

うまくいかなくなる前には、必ず前兆が出ます。

質問リストが 2 ヶ月連続で膨らんでいるとき。原因はたいてい、社内ルールが言語化されていないことです。「交際費と会議費の線引き」「立替経費の上限」といった判断基準を経費規程として文書化し、委託先に渡せば質問は減ります。

月次レポートを誰も開いていないとき。数字を見ない運用は、外注そのものが目的化したサインです。丸投げの目的は作業から解放されることであって、数字から解放されることではありません。月に 30 分、増減の大きい科目だけでも確認する時間を固定してください。

支払承認が形骸化しているとき。一覧をスクロールして承認ボタンを押すだけの運用は、承認していないのと同じです。金額上位 5 件だけは請求書の現物を開いて確認する、といった軽いルールで十分に機能します。

どこから丸投げを始めるか

いきなり全業務を出す必要はありません。記帳から始めて、月次決算、経費精算、支払の順に広げるのが失敗の少ない順序です。記帳は証憑を渡せば完結し、効果も納期という形ですぐ見えるため、委託先の品質を測る試金石になります。

AI が証憑の読み取りと仕訳の起票を担う4649経理代行の記帳業務(4649記帳代行)では、従来 2 週間かかっていた記帳作業が 1 日に短縮された事例があります(※実際のご利用者様の事例です。納期は業務内容やボリュームにより異なります)。記帳が数日で返ってくる体制になると、月次の締めそのものが前倒しになり、支払や月次決算まで範囲を広げたときの効果が大きくなります。

範囲を広げるときは、業務単位の見積もりを取ってください。丸投げの範囲と料金の関係は経理代行の費用相場で整理しています。


丸投げの設計とは、「何を出すか」ではなく「何を残すかを決めること」です。税務申告・承認と送金・納付と社保手続き・質問への回答・保存——この 5 つを社内に残す形を先に作れば、残りの作業はほぼ全部を外に出せます。毎月手を動かすのは、資料の受け渡しを除けば承認・送金・回答・納付の 4 つです。

なお、個別の税務判断(勘定科目の是非や消費税の取扱いなど)は税理士の業務です。判断に迷うときは顧問税理士にご相談ください。

よくある質問

Q. 経理を完全に丸投げして、社長は何もしなくてよくなりますか?
なりません。作業はほぼすべて外に出せますが、支払の最終承認、ネットバンキングの送金実行、委託先からの質問への回答、そして帳簿・証憑の保存責任は社内に残ります。月に合計 1〜2 時間程度の関与は必要だと見込んでください。逆にこの時間をゼロにしようとすると、誤払いや不正送金を止める仕組みがなくなります。
Q. 領収書を袋のまま送るような形でも受けてもらえますか?
受け付ける会社は多く、当社もチャットで送るだけの運用です。ただし「誰にいくら払ったか」「この入金は何か」といった、資料だけでは判断できない取引については必ず質問が返ります。質問への回答担当と回答期限を決めておかないと、資料を丸ごと渡した効果が質問往復で相殺されます。
Q. 顧問税理士がいる場合でも、経理代行に丸投げできますか?
できます。税務申告・税務相談は税理士の独占業務なので、経理代行が引き受けるのは日々の経理実務までです。「記帳と支払は経理代行、申告と税務判断は顧問税理士」という分担が一般的で、顧問契約を解約する話ではありません。導入前に役割分担を顧問税理士へ共有しておくと、決算期のやり取りがスムーズになります。