4649
仕訳・勘定科目

期ずれとは?起きる原因と決算・税務への影響、月次での防ぎ方

執筆: 4649編集部

期ずれとは、本来計上すべき事業年度とは違う年度に売上や費用を計上してしまう誤りです。金額は合っているのに「いつ」を間違えている点に特徴があり、翌期に反対方向の誤りとして必ず現れます。2期を通算すれば所得の合計は一致する。だから軽く見られがちですが、税務調査で指摘されやすい項目なのは、単年度の課税所得がその分だけ動くからです。

定義、いつ計上すべきかの判定基準、起きる原因、税務上の影響、そして決算期末ではなく毎月の締めで潰す方法の順にまとめます。

期ずれとは:取引はあるが、入る事業年度が違う状態

3月31日決算の会社で、3月20日に納品して先方の検収も済んだ取引を、請求書の発行が4月10日だったという理由で4月の売上に計上した。これが売上の期ずれです。費用側なら、3月に使った外注作業の請求書が4月に届き、届いた月の費用にしてしまうケース。取引は帳簿に載っていて金額も正しく、違うのは年度だけです。

計上漏れとは性質が異なります。計上漏れは取引が帳簿にない状態。期ずれは翌期に逆の誤りが立つため、2期通算では戻ります。この「いつか戻る」性質が、期ずれを後回しにさせます。

いつ計上すべきかの判定基準:引渡基準と債務確定基準

判定の軸は請求書の日付でも入出金の日でもなく、モノやサービスが動いた日です。

売上については、法人税法第22条の2が、資産の販売等に係る収益の額は原則としてその引渡しの日または役務の提供の日の属する事業年度の益金に算入すると定めています。では引渡しの日はいつか。国税庁の法人税基本通達2-1-2(第1款の2 棚卸資産の販売に係る収益)は、出荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日など、資産の種類・性質や契約内容に応じて合理的な日を、継続して適用することを求めています。自社が出荷基準なのか検収基準なのかを決めて、毎期同じ基準で運用する。ここが揺れると期ずれは構造的に発生します。

費用については債務確定基準です。法人税基本通達2-2-12(第2款 販売費及び一般管理費等、解説は国税庁タックスアンサー No.5387「販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定」)は、償却費以外の費用について、①期末までにその費用に係る債務が成立していること、②期末までに具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること、③期末までにその金額を合理的に算定できること、の3つをすべて満たすことを求めています。3月に作業が完了していれば、請求書が4月着でも3月の費用。逆に、4月着手の作業に対して3月に払った前払金は、3月の費用にはなりません。

期ずれが起きる3つの原因:締め日・検収・年払い

1つ目は、請求書の締め日で計上していること。 20日締めの取引先の請求書をそのまま仕訳に起こすと、21日から月末までの取引が翌月(決算月なら翌期)に流れます。20日締めの取引先の売上が月商800万円のうち200万円あるなら、毎月ずれるのはその200万円全額ではなく、21日から月末までに発生した分だけです。売上が月内で平準的なら、月67万円前後が毎月翌月に流れる計算になります。

2つ目は、検収と請求のタイミングのずれ。 受託開発や工事のように検収書で引渡しが確定する取引は、作業完了から検収書の受領までに日数が空きます。期末の1週間に完了した案件ほど、検収日が翌期に落ちやすい。

3つ目は、年払い・前払いの契約。 保険料、保守料、家賃、サブスクの年額前払いは、支払った期に全額を費用にすると翌期分まで当期の損金になります。原則は前払費用として資産に計上し、月割で費用化する。ただし一定の要件を満たす短期前払費用には、支払時の損金算入を認める取扱いがあります(国税庁タックスアンサー No.5380「短期前払費用として損金算入ができる場合」)。4科目の使い分けと仕訳例は経過勘定の仕訳にまとめています。

決算・税務への影響:戻らないのは加算税と延滞税

税務調査で期ずれを指摘されると、調査対象となった事業年度の所得に加算され、修正申告と追加納税が必要になります。翌期は逆に所得が減るため、2期を通算した所得は元に戻る。ところが、そこで課された加算税と延滞税は戻りません。国税庁タックスアンサー No.5300「損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期」は、各種加算税と延滞税を損金に算入されないものとして挙げています。つまりペナルティ部分は損金にもならない純粋な持ち出しになる。期ずれが「通算すれば同じ」で済まないのは、この一点によります。

なお、期ずれは消費税の課税期間にも同じ形で及びます。個別の取引がどの年度・どの課税期間に属するかの判定と、修正申告や更正の請求といった手続の要否は税理士の業務です。自社のケースで迷うときは顧問税理士にご相談ください。

決算期末ではなく、毎月の「月ずれ」として潰す

期ずれ対策を決算月の作業として設計している会社は多いのですが、原因である締め日・検収・年払いは毎月動いています。決算月だけ点検する運用は、12回起きている同じ誤りのうち1回だけを見ていることになる。月次決算を締めていれば、期ずれは毎月「月ずれ」として検出できます。

毎月やることは3つです。計上日のルールを発生日に統一する——請求書の日付ではなく、納品書・検収書・作業完了報告の日付を仕訳の計上日にすると決め、売上は出荷基準か検収基準かを明文化する。月末をまたぐ取引のリストを作る——月末5営業日の納品・検収と、翌月初に届いた請求書を並べ、それぞれ発生日がどちらの月かを確認する。ここが期ずれ予備軍の全量です。年払い契約を一覧で持ち、月割を回す——契約名・期間・年額・月額・当月末残高を管理表にして、経過勘定の残高が毎月正しく減っていくかを見ます。

月次で残高照合まで済ませておけば、期末に残る論点は大幅に減ります。手順は残高照合のやり方月次決算 完全ガイドに載せています。

月末付近の取引を毎月確認しきれない場合は、チェック部分を外に出す選択肢もあります。当社の4649仕訳チェックは、勘定科目・消費税の税区分・二重計上・計上漏れとあわせて期ずれを観点に含め、サンプルではなく全仕訳をAIでチェックして、修正が必要な仕訳を根拠つきで報告するメニューです。記帳は自社や顧問の会計事務所が行い、チェックだけを任せる使い方ができます。


期ずれは注意力の問題ではなく、請求書の締め日と実際の取引日がずれているという業務の構造から生まれます。だから精神論では減りません。計上日の基準を明文化し、月末またぎの取引を毎月洗う。決算前の1回ではなく毎月12回のほうが、結果として期末の作業は軽くなります。

よくある質問

Q. 期ずれと計上漏れは何が違いますか?
計上漏れは取引そのものが帳簿に入っていない状態で、放置すれば所得は過少のまま確定します。期ずれは取引自体は計上されていて、入る事業年度だけが違う状態です。翌期に反対方向の誤りとして必ず現れるため、2期を通算すれば所得の合計は一致します。ただし単年度の課税所得は狂ったままで、税務調査で指摘されれば調査対象年度の所得に加算されます。「どうせ翌期で戻る」と考えて放置してよい誤りではない、という点が実務上の要注意ポイントです。
Q. 決算を締めた後に自社で期ずれを見つけたら、どうすればよいですか?
まず、その取引が本来どちらの事業年度に属するかを、売上なら引渡し・役務提供の日、費用なら債務確定の3要件で確定させてください。そのうえで、申告済みの年度の所得が過少になっていたか過大になっていたかによって、修正申告や更正の請求といった手続の要否が変わります。どの手続をどの期限で行うか、金額的にどこまで対応するかは個別の税務判断になるため、顧問税理士に相談して決めてください。自己判断で翌期の仕訳だけを調整すると、誤りが2期にまたがって残ることがあります。
Q. 年払いの保険料や保守料は、短期前払費用の特例を使えば期ずれを気にしなくてよいですか?
特例が使える取引に限られます。国税庁タックスアンサー No.5380「短期前払費用として損金算入ができる場合」は、一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した前払費用のうち、支払日から1年以内に役務の提供を受けるものを、継続適用を条件に支払時の損金として認めています。ただしこれは適用の可否を尽くした要件ではなく、契約の内容によっては対象外になります。たとえば、借入金を預金や有価証券などに運用する場合の支払利息のように、収益と対応させる必要があるものは、たとえ1年以内の短期前払費用でも支払時の損金算入は認められません。自社の契約が特例の対象になるかは税務判断なので、顧問税理士に確認してください。特例を使わない契約は、前払費用として月割で費用化します。