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仕訳・勘定科目

立替金と仮払金の違い:使い分けの基準と精算時の仕訳例

執筆: 4649編集部

立替金と仮払金の違いは、相手と金額が確定しているかです。立替金は、本来は取引先や従業員が負担すべき確定した金額を会社が先に払ったもので、相手から回収して消える債権。仮払金は、出張の概算払いのように内容も金額もまだ決まっていない支出で、精算書が出たときに旅費交通費などの費用科目へ振り替えて消えます。

どちらも貸借対照表の流動資産に載る「一時的な置き場」の科目で、問われるのは科目名よりも、月末に残高の中身を説明できるかです。判定の基準、典型例、仕訳例、月末に残高があるときの扱いを整理します。

違いは「確定しているか」。立替金は回収、仮払金は精算で消える

比較項目立替金仮払金
性質他人が負担すべき支出を会社が代わりに払った債権会社自身の支出だが、内容・金額が未確定
相手・金額確定している(誰にいくら請求するかが決まる)確定していない(精算して初めて決まる)
消え方相手からの入金、または給与・売掛金との相殺で回収精算書に基づき費用科目へ振替。残額は返金、不足分は追加支給
消費税立替払いそのものは会社の課税仕入れにならない精算時に確定した費用の内容で税区分を判定
月末に残っていたら請求・回収が遅れている精算が遅れているか、精算後の振替が漏れている

立替金は会社の費用ではないので損益計算書に出ず、回収されれば貸借対照表から消えます。仮払金は最終的に費用になりますが、精算書が出るまで科目を決められないため、決まるまでの間だけ仮の科目に置きます。

立替金の典型:取引先負担の費用、休職者の社会保険料、幹事としての立替

取引先が負担すべき送料や手数料を、取引の都合で自社が先に払う。これが立替金の基本形です。売掛金と一緒に請求書へ載せて回収するか、次回の支払いと相殺します。

従業員向けで多いのは、社会保険料の本人負担分です。健康保険料の被保険者負担分は、事業主が報酬を支払うときに前月分の保険料を控除できると定められています(健康保険法第167条)。休職中で給与の支払いがない従業員の保険料は控除する給与がないため、会社がいったん全額を納付し、本人負担分を立替金に計上して、復職後の給与から回収するか本人に振り込んでもらいます。会社負担分は通常どおり法定福利費です。ただし産前産後休業・育児休業の期間は、事業主が保険者等へ申出をすることで本人負担分・会社負担分とも保険料が免除されるため(健康保険法第159条・第159条の3、厚生年金保険法第81条の2・第81条の2の2)、納付する保険料そのものが発生せず、立替金は立ちません。厚生年金分の申出先は年金事務所、健康保険分は協会けんぽ加入なら年金事務所、健康保険組合に加入している事業所なら加入先の健康保険組合です。立替金に計上するのは、私傷病による休職など免除の対象にならない無給期間の本人負担分です。

インボイス制度下で増えたのが、複数社で共同開催したイベントの会場費などを幹事会社が一括で払うケースです。幹事会社の帳簿では他社負担分が立替金になります。請求書(インボイス)は幹事会社宛に発行されるため、他社がその写しだけで仕入税額控除を受けることはできません。幹事会社が立替金精算書を作成して、インボイスの写しとあわせて渡せば、他社側で仕入税額控除の要件を満たします(国税庁インボイス制度に関するQ&A 問94 立替金、消費税法基本通達 11-6-2 立替払に係る適格請求書)。幹事を引き受けた経理担当者は、立替金の請求書に精算書を添付する手順を忘れないでください。

仮払金の典型:出張の概算払いと、内容が確定していない支出

出張前に旅費の概算を渡す。これが仮払金の代表例です。出張から戻った従業員が精算書と領収書を出し、経理が実費を旅費交通費に振り替え、残額を回収するか不足分を追加で支払います。

精算で確定した旅費のうち、交通費・宿泊費・日当などその旅行に通常必要と認められる範囲の金額は、所得税が非課税の旅費です(所得税基本通達 9-3 非課税とされる旅費の範囲)。消費税でも、従業員に支給する出張旅費等のうち通常必要と認められる部分は、インボイスがなくても帳簿のみの保存で仕入税額控除でき、この特例は概算払いか実費精算かを問わず使えます(国税庁インボイス制度 出張旅費等特例)。どちらも「通常必要と認められる範囲」が前提なので、精算せずに残額を本人へ渡しきりにする運用は避けてください。個別の課税関係は顧問税理士に確認する領域です。

もう1つの仮払金は、内容不明の出金です。役員が法人カードで払った金額の用途がわからない、仕入先への振込が何の請求分か特定できない、といった場面で、翌月の締めまで一時的に置きます。月次決算を早期化する方法で書いたとおり、質問の回答期限を決め、期限を過ぎたら仮払金で処理して翌月に修正する、と明文化しておけば、締めを止めずに残高を管理できます。

従業員の「立替経費」は、会社の帳簿では立替金ではない

ここが最も混同されやすい点です。従業員が会社の消耗品を自分のカードで買い、経費精算で会社から受け取る。経費精算システムの画面には「立替精算」と表示され、経費精算規程の条文にも「経費の立替」と書きます。しかし会社の帳簿で立替金を使うのは「会社が」他人の分を先に払ったときであり、このケースで先に払ったのは従業員です。会社は従業員にお金を返す側なので、科目は未払金です。月末締め翌月払いの給与のように継続的な役務の既経過分は未払費用ですが、消耗品の立替精算は単発取引なので未払金です。

誰が先に払ったか会社の帳簿での科目
会社が、取引先や従業員の負担分を払った立替金(資産)
従業員が、会社の経費を払った未払金(負債)。精算日に支払って消す
会社が、従業員に概算で渡した仮払金(資産)。精算で費用に振り替える

従業員が立て替えて受け取ったコンビニなどのレシート(簡易インボイス)は、「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」の記載が不要なので、宛名のないレシートはそのまま会社が保存すれば仕入税額控除の要件を満たします(国税庁インボイス制度に関するQ&A「適格簡易請求書の記載事項」)。宛名に従業員名が入った簡易インボイスを受け取った場合は、従業員名簿等の保存を併せて行えば控除できます。名簿等がなく立替払をした従業員を特定できないときは、その従業員が作成した立替金精算書の交付を受けて保存する必要があります(同Q&A「従業員が立替払をした際に受領した適格簡易請求書での仕入税額控除」)。宛名が必要な適格請求書を従業員名で受け取った場合の扱いはインボイス制度の買い手側の経理実務で整理しています。

仕訳例:発生から精算までの7ケース

いずれも税込経理方式、金額は税込です。

#取引借方貸方
1取引先負担の送料3,300円を自社が先に支払った立替金 3,300普通預金 3,300
21の送料を翌月、売掛金と一緒に回収した(売掛金22万円)普通預金 223,300売掛金 220,000 / 立替金 3,300
3休職中の従業員の社会保険料本人負担分28,000円を会社が納付した(会社負担分は省略)立替金 28,000普通預金 28,000
4出張前に概算で5万円を現金で渡した仮払金 50,000現金 50,000
54の精算。実費42,000円、残額8,000円を現金で受け取った旅費交通費 42,000 / 現金 8,000仮払金 50,000
6従業員が消耗品6,600円を立て替えて購入し、経費精算を申請した消耗品費 6,600未払金 6,600
76を月末の経費精算日に従業員へ振り込んだ未払金 6,600普通預金 6,600

5で実費が仮払額を超えた場合は、旅費交通費56,000/仮払金50,000・現金6,000のように、超過分を追加で支払います。3の立替金は、復職後の給与から控除する月に「給与/立替金」で消します。6と7には会社側の立替金が一度も登場しません。

月末に残高があるときの扱い:精算期限を決め、残高の中身を1件ずつ書く

立替金と仮払金は「後で整理する」の置き場になるため、月次の残高照合で中身を毎月確認する科目です。残高があること自体は異常ではなく、問題は内訳を1件ずつ説明できない状態です。月末残高を「相手・金額・発生日・内容・精算予定日」に分解した残高内訳表を作り、翌月の締めで再確認します。上の仕訳例なら、仮払金50,000円は「営業部A・大阪出張の概算・精算書提出期限10/5」、立替金28,000円は「総務部C・社会保険料本人負担分・復職後の給与控除」という1行になります。

精算期限は規程で決めます。「仮払金の精算は出張終了後5営業日以内」「期限を過ぎた仮払金は翌月の給与支給日までに本人へ督促する」の2行があれば、経理は期限の有無で機械的に督促できます。仮払金の残高が2か月続いて同じなら、精算書が出ていないか、精算後の振替が漏れているかのどちらかです。とくに役員への仮払金が精算されずに残り続けると、実質的な貸付金とみて認定利息の計上を求められることがあります(国税庁の個別通達認定利息の取扱についても、同族会社の代表者等に対する仮払金について認定利息を計算する場面を前提にしています)。役員の仮払金は、精算期限の管理を従業員より厳しくしておくのが安全です。科目別の照合手順は残高照合のやり方、前払費用・預り金・仮受金との線引きは勘定科目の選び方で整理しています。

この2科目の誤りは、立替金にすべき支払いを費用に落としている、精算済みの仮払金が振り替えられず残っている、といった形で現れます。当社の仕訳チェックは、勘定科目と消費税の税区分の誤り、二重計上、計上漏れ、期ずれを観点に、サンプルではなく全仕訳をAIでチェックし、修正が必要な仕訳を根拠つきで報告するメニューです。記帳は自社や顧問の会計事務所で行い、チェックだけを任せる使い方ができます。


立替金は「確定した他人の分を会社が先に払った債権」、仮払金は「内容が決まるまでの会社自身の概算払い」。従業員の立替経費は会社側では未払金で、立替金ではありません。この3行を科目辞書に書き、精算期限を規程に入れれば、月末に残高の中身がわからない状態はなくなります。まず今月の残高試算表で、仮払金と立替金を1件ずつ相手と精算予定日に分解してみてください。

よくある質問

Q. 仮払金と前払金は何が違いますか?
相手と内容が確定しているかで分かれます。前払金は、物品の購入や単発の役務について相手も金額も決まっている取引の手付・内金で、物品や役務を受け取ったときに仕入や費用、資産に振り替えます。仮払金は、出張の概算払いのように、何にいくら使うかが確定していない支出です。精算書が出てきて初めて科目と金額が決まります。前払金は「何を買うか決まっている」、仮払金は「使い道がまだ決まっていない」と覚えてください。なお継続的な役務の提供(年払いの保険料や保守料)の前払いは前払費用で、これはまた別の科目です。
Q. 従業員が立て替えた経費は、会社の帳簿では立替金になりますか?
なりません。立替金は「会社が」他人の負担すべき金額を先に払ったときの科目です。従業員が会社の経費を自分の財布から払った場合、先に払ったのは従業員であり、会社はその従業員にお金を返す側です。会社の帳簿では費用の計上と同時に従業員への未払金を立て、精算日に支払って消します。経費精算システムの画面に「立替精算」と表示されていても、会社側の科目は未払金です。
Q. 立替金や仮払金が何か月も残ったままになっています。どうすればよいですか?
まず残高を1件ずつ、相手・金額・発生日・精算予定日に分解して残高内訳表に書き出してください。仮払金は精算書の提出を督促して費用科目に振り替え、立替金は相手に請求して回収します。相手が倒産するなどして回収の見込みが立たない立替金を貸倒損失として損金にできるかは、法人税法上の要件を満たすかの判断になるため、顧問税理士に確認してください。