勘定科目の選び方:迷いやすい科目の判定基準と一覧【2026年版】
執筆: 4649編集部
勘定科目の選び方は、税務で区別が求められる科目を先に固定し、残りは自社の管理目的で決め、決めたら継続するという3段で決まります。法令が定めているのは損益計算書と貸借対照表の「区分」までで、その中のどの科目を使うかは会社が決めるものです。全社共通の正解一覧は存在しません。
だから、科目選びで消耗する会社に足りないのは知識ではなく、社内の判定順序です。この記事では、法令が決めている範囲を確認したうえで、迷ったときに上から当てる5つの問い、税額に影響するため先に決めるべき6グループの科目、迷いやすい30取引の判定一覧、自社の科目辞書を作る手順まで、勘定科目の選び方を一通り扱います。個別の科目の線引きは消耗品費と雑費の違いや消費税の税区分の判定で深掘りしているので、この記事は判断の「順序」に重心を置きます。
勘定科目に「法定の正解一覧」はない:法令が決めるのは区分まで
会社の決算書について法令が定めているのは区分です。会社計算規則第88条は、損益計算書を売上高・売上原価・販売費及び一般管理費・営業外収益・営業外費用・特別利益・特別損失に区分して表示することを求め、適当な場合には項目を細分できるとしています。貸借対照表も同じ規則で資産・負債・純資産に区分され、資産はさらに流動資産・固定資産・繰延資産に分かれます。ここまでが法令の要求で、「販売費及び一般管理費」の中を通信費と支払手数料にどう分けるかは書かれていません。
税法も科目名を指定しません。法人税法第22条第4項は、益金と損金の額を「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算すると定めており、損金になるかどうかは科目名ではなく支出の内容で判定されます。個人事業主の必要経費も同じ構造で、No.2210 必要経費の知識は、売上原価と、その年の販売費・一般管理費その他業務上の費用を必要経費としています。科目の話は出てきません。
中小企業向けの会計ルールとして中小企業庁が示す中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)も、収益・費用・資産・負債の計上の考え方を示すものであって、勘定科目の一覧表ではありません。ここで押さえておきたいのは、この要領が会計処理の方法を毎期継続して適用することを求め、変更には合理的な理由と注記を要するとしている点です。科目の選び方の第3原則「継続」の根拠はここにあります。
つまり、会計ソフトに最初から入っている科目一覧は「よく使われる科目」であって「使わなければならない科目」ではありません。減らしてもよいし、増やしてもよい。決めるのは会社で、決めたら続ける。これが出発点です。
選び方の3原則:税務区分 → 管理目的 → 継続
科目を決める順序を3つに分けます。上にあるものほど動かせません。
第1原則:税務で区別が求められる科目を先に固定する。 交際費等、寄附金、租税公課のうち損金不算入の税金、修繕費と資本的支出、給与として源泉徴収の対象になる支出、10万円以上の資産。この6グループは、科目の付け方が法人税の別表計算や源泉徴収に直結します。会社の好みで動かす余地がないので最初に決めます(次の次のセクションで基準を並べます)。
第2原則:残りは月次で何を見たいかで決める。 通信費と支払手数料をどう分けるか、クラウドサービスの月額をどちらに入れるかは、税額に影響しません。決め手は「月次の増減分析で何を追いたいか」です。広告費を媒体別に追いたい会社は広告宣伝費に補助科目を切り、人件費を正社員と業務委託で分けて見たい会社は外注費から業務委託費を独立させます。科目は経営者が見たい単位で切るものであって、細かければよいわけではありません。月次レポートで経営者が見る数字から逆算して決めてください。
第3原則:決めたら継続する。 今期は消耗品費、来期は雑費と揺れれば、前年同月比の比較が成立しません。中小会計要領が継続適用を求めているのはこのためです。変えるなら期首に、理由を残して変える。期中の変更は過去仕訳の付け替えとセットで行います。
この3原則を実務に落とすと、次の判定フローになります。
迷ったときの判定フロー:5つの問いを上から当てる
新しい取引の科目に迷ったら、次の問いを順に当てます。並列に候補を眺めて選ぶのではなく、上から落として最初に Yes になったところで止める。これだけで判断のぶれはほぼ消えます。
| 順 | 問い | Yes なら |
|---|---|---|
| 1 | 費用ではなく、貸借対照表に載せる取引か(立替・預り・前払・未確定の仮払い) | 立替金・預り金・前払費用・仮払金など(後述) |
| 2 | 取得価額10万円以上で1年以上使う物品か | 固定資産に計上。取得価額の区分に応じて一括償却資産・少額減価償却資産の特例の適用可否を判定 |
| 3 | 税務で区分が指定される支出か(飲食・贈答・寄附・税金・修繕・従業員への給付) | 税務の基準で科目を決める(次セクション) |
| 4 | 自社の科目辞書に同じ内容の前例があるか | 前例の科目。迷ったら辞書を直す(新しい科目を勝手に足さない) |
| 5 | 内容に対応する専用科目があるか(通信費・支払手数料・新聞図書費・諸会費など) | その科目。どれにも当たらず少額・一時的なら雑費 |
1行目を最初に置いているのは、費用科目の選択より前に「そもそも費用なのか」で誤る仕訳のほうが決算への影響が大きいからです。社会保険料の従業員負担分を法定福利費に入れると、預り金が消えて費用が二重になります。2行目の10万円の線は法人税法施行令第133条で、判定額は自社の消費税の経理方式(税込か税抜か)で算定した価額を使います。この線引きの詳細は消耗品費と雑費の違いにまとめました。
4行目の「辞書」は、このあと作り方を示す社内の判定表です。辞書がない会社では、担当者ごとに5行目へ飛んで自分の感覚で選ぶので、同じクラウドサービスが通信費・支払手数料・雑費の3科目に散ります。
税額に影響する科目:ここだけは社内ルールより税務基準を優先する
第1原則の6グループを、根拠と一緒に並べます。ここに挙げる金額基準は2026年10月1日時点の制度で、税制改正で動くものです。個別の取引がどれに当たるかの判断は税理士の領域なので、判定に迷う案件は顧問税理士に確認してください。
交際費等と会議費・福利厚生費・諸会費
法人税では、得意先・仕入先など事業に関係のある者に対する接待・供応・慰安・贈答の支出が交際費等に当たり、損金算入に制限があります(No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算)。中小法人(資本金1億円以下等)は年800万円までの定額控除か、接待飲食費の50%の損金算入かを選択します。
会議費との線引きで使うのが飲食費の1人当たり基準です。令和6年(2024年)4月1日以後に支出する飲食費は、1人当たり1万円以下であれば交際費等から除かれます(同タックスアンサー。令和6年3月31日以前は5,000円以下)。この除外を受けるには、飲食の年月日、参加した得意先等の氏名・名称と関係、参加人数、金額、飲食店の名称・所在地を記載した書類の保存が要件です。参加者名のない領収書を会議費で処理すると、金額が1万円以下でも要件を満たしません。経費精算の申請項目に参加者欄を持たせるのはこのためで、経費精算規程の作り方では条文の書き方まで示しています。
福利厚生費との線引きはNo.5261 交際費等と福利厚生費との区分が基準です。従業員の慰安のために行う運動会・演芸会・旅行などに通常要する費用、創立記念日などに従業員におおむね一律に社内で供与する通常の飲食費、一定の基準に従って支給する慶弔見舞金は福利厚生費であって交際費等ではありません。裏返せば、役員や一部の従業員だけを対象にした飲食は福利厚生費の要件を欠きます。
諸会費との線引きはNo.5382 同業者団体等の加入金と会費の取扱いです。同業団体の通常の業務運営のために経常的に要する費用の分担額としての通常会費はその年度の損金(諸会費)ですが、懇親会や政治献金の目的で徴収される会費は内容に応じて交際費等や寄附金になります。年会費という名目だけで諸会費に入れないでください。
寄附金
法人が行う金銭その他の資産の贈与や経済的利益の無償供与は寄附金に当たり、資本金等の額と所得の額から計算した限度額までしか損金になりません(No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算)。広告宣伝や見本品のための費用と交際費等は寄附金から除かれるので、地元の祭りへの協賛金が「社名入りの提灯が出る」なら広告宣伝費、対価性がなければ寄附金、と内容で分かれます。取引先への値引きや債権放棄も、合理的な理由がなければ寄附金として扱われる可能性がある領域です。
租税公課:損金になる税金とならない税金
税金は全部が租税公課ではありません。No.5300 損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期によると、法人税・地方法人税・法人住民税、各種の加算税や延滞税(一部の地方税の延滞金を除く)、罰金・科料・過料は損金になりません。一方、事業税・固定資産税・自動車税・印紙税などは損金になります。
科目設計としては、法人税・地方法人税・住民税(損金不算入)と事業税(損金算入だが表示上は同じ科目)を「法人税、住民税及び事業税」に、その他の税金を「租税公課」に分けておくのが標準です。延滞税や加算税は租税公課に入れたうえで申告時に加算する処理が一般的ですが、月次で識別できるように補助科目か摘要で「延滞税」と明示しておくと、決算のときに拾い漏れません。
修繕費と資本的支出
固定資産の修理・改良の支出は、原状回復や維持管理なら修繕費、資産の価値を高めたり耐久性を増したりするなら資本的支出(資産計上)です。No.5402 修繕費とならないものの判定には形式基準があり、1件の修理・改良の金額が20万円未満、またはおおむね3年以内の周期で行われる修理なら修繕費でよく、資本的支出か修繕費か明らかでない支出は、60万円未満または前期末取得価額のおおむね10%以下なら修繕費とできます。エアコンの修理15万円は修繕費、建物の増築は資本的支出。中間の「外壁の全面塗り替え80万円」のような案件は内容で判断が分かれるので、顧問税理士と決めます。
給与として源泉徴収の対象になる支出
従業員への支出は、科目を福利厚生費や旅費交通費にしても、税務上は給与として源泉徴収が必要になる場合があります。食事の支給は、従業員が食事の価額の半分以上を負担し、かつ会社の負担額が月7,500円(消費税抜き)以下であれば給与として課税されません(No.2594 食事を支給したとき)。この7,500円は令和8年(2026年)4月1日以後に支給する食事から適用される金額で、改正前は3,500円でした(食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて)。通勤手当は、電車・バス通勤者の場合、最も経済的かつ合理的な経路での通勤定期券代のうち月15万円までが非課税です(No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当)。
科目選びの実務では、「福利厚生費に入れれば課税されない」と考えないことが肝心です。科目は会計上の分類、課税の有無は所得税法上の判定で、別々に決まります。
消耗品費と固定資産
10万円の線は判定フローの2行目で触れました。取得価額10万円以上の物品は原則として固定資産ですが、20万円未満なら3年均等の一括償却資産、中小企業者等(常時使用する従業員400人以下など)なら40万円未満で年300万円までを取得した期の損金にできる少額減価償却資産の特例があり、適用には青色申告と申告書への明細書添付が要件です。この40万円は令和8年(2026年)4月1日以後に取得して事業の用に供する資産から適用される金額で、それ以前に取得したものは30万円未満です。令和8年度税制改正で従業員数の要件も500人以下から400人以下に引き下げられ、適用期限は令和11年3月31日まで延長されました。特例の金額基準と適用期限は税制改正で動くので、取得した時点の国税庁の記載で確認してください。資産計上した後の償却計算は減価償却の計算方法、台帳への登録は固定資産台帳の作り方で扱っています。
迷いやすい科目の判定一覧:30取引
判定フローと税務基準を、実際に迷いやすい取引に当てはめた一覧です。「候補」の列に2つ並ぶものは、税額に影響しないので自社で1つに決めて辞書に書く取引です。
| 取引 | 科目 | 決め手 |
|---|---|---|
| 取引先2名と自社2名で会食、合計3万2,000円(1人8,000円) | 会議費(交際費等から除外) | 1人1万円以下。参加者名・人数・店名を記録した書類の保存が要件 |
| 取引先との会食、1人1万2,000円 | 交際費 | 1万円超。全額が交際費等 |
| 取引先へのお中元・お歳暮 | 交際費 | 贈答は金額にかかわらず交際費等 |
| 全従業員対象の忘年会 | 福利厚生費 | 従業員の慰安のための通常の費用(No.5261) |
| 役員2名だけの飲食 | 交際費、または給与の検討対象 | 福利厚生費の「おおむね一律」を満たさない。社内飲食費は1人1万円以下の除外規定の対象外で、接待・慰安の性質があれば交際費等、私的な飲食なら役員給与。判定は税理士に確認 |
| 従業員の結婚祝い金(慶弔規程あり) | 福利厚生費 | 一定の基準に従った支給(No.5261) |
| 社内会議の弁当代 | 会議費 | 会議に関連して通常要する程度の飲食は交際費等に含まれない。自社で会議費か福利厚生費かを固定 |
| 業界団体の年会費 | 諸会費 | 通常会費は損金(No.5382) |
| 業界団体の懇親会費 | 交際費 | 懇親目的の会費は交際費等(No.5382) |
| 地元の祭りへの協賛金(社名入り提灯あり) | 広告宣伝費 | 宣伝効果のある協賛は寄附金から除外 |
| 対価性のない寄附 | 寄附金 | 損金算入限度額の計算対象 |
| 収入印紙 | 租税公課 | 損金になる税金 |
| 法人税・住民税の納付 | 法人税、住民税及び事業税 | 損金不算入。租税公課と分ける |
| 延滞税・加算税 | 租税公課(損金不算入) | 摘要で識別し、申告時に加算 |
| 固定資産税・自動車税 | 租税公課 | 損金になる税金 |
| 振込手数料 | 支払手数料 | 役務の対価 |
| クレジットカードの年会費 | 支払手数料 または 諸会費 | 税額に影響なし。自社で1つに固定 |
| クラウドサービスの月額利用料 | 通信費 または 支払手数料 | 税額に影響なし。件数が多ければ「システム利用料」を新設してもよい |
| 切手・郵送代 | 通信費 | 書類の送付 |
| 商品の発送費 | 荷造運賃 | 販売に直接要する運賃。書類の宅配便は通信費 |
| 従業員の通勤定期券代 | 旅費交通費 | 月15万円までは非課税。超過分は給与 |
| 出張の日当 | 旅費交通費 | 出張旅費規程に基づく支給 |
| 従業員の健康診断費用 | 福利厚生費 | 全従業員対象が前提 |
| 従業員全員への食事補助(従業員が半額以上負担、会社負担月7,500円以下) | 福利厚生費 | 要件を満たせば給与課税なし(No.2594) |
| 書籍・新聞の購読料 | 新聞図書費 | 情報収集の費用 |
| 外部セミナーの受講料 | 研修費(教育訓練費) | 自社で科目を1つに固定。新聞図書費に入れない |
| 求人広告の掲載料 | 広告宣伝費 または 採用費 | 税額に影響なし。採用コストを追うなら採用費を新設 |
| ノートPC 8万8,000円(税込経理) | 消耗品費 | 10万円未満 |
| ノートPC 15万4,000円(税込経理) | 工具器具備品 | 10万円以上。20万円未満なら一括償却資産、中小企業者等なら少額減価償却資産の特例で即時損金も選択可 |
| エアコンの修理 15万円 | 修繕費 | 20万円未満の形式基準(No.5402) |
一覧の「自社で1つに固定」の行が、科目辞書の最初の登録候補です。
貸借対照表側で迷う科目:立替金・仮払金・前払費用・預り金
判定フローの1行目、費用でない取引の科目も整理しておきます。費用科目の迷いは月次の分析を鈍らせる程度ですが、こちらの誤りは残高が合わなくなり、決算に直接響きます。
立替金と仮払金。 立替金は、本来は他人(取引先や従業員)が負担すべきお金を会社が一時的に払ったもので、相手も金額も確定しています。取引先が負担すべき送料を先に払った、従業員の社会保険料を給与控除前に会社が納めた、といった場面です。仮払金は、内容や金額がまだ確定していない支出で、出張前に渡す概算の旅費が典型です。精算時に旅費交通費などの費用科目に振り替え、残額を現金で戻します。仮払金が月末に残っていたら、精算が遅れているか、精算後の振替が漏れているかのどちらかです。
前払費用と前払金。 前払費用は、継続的な役務の提供を受ける契約で、まだ提供を受けていない期間分を先に払ったもの(年払いの保険料、家賃の前払い)。前払金は、物品の購入や単発の役務に対する手付・内金です。前払費用は時の経過で費用になり、前払金は物品や役務を受け取ったときに費用や資産になります。4つの経過勘定との使い分けは経過勘定の仕訳で仕訳例つきで整理しました。
預り金と仮受金。 預り金は、従業員の源泉所得税・住民税・社会保険料の本人負担分のように、いったん預かって第三者に納めるお金です。仮受金は、入金があったが相手も内容も不明なもの。仮受金は内容が判明するまで売上にしてはいけませんし、判明したら速やかに振り替えます。
個人事業主の事業主貸・事業主借。 事業用口座から生活費を引き出したら事業主貸、私用のカードで事業の経費を払ったら事業主借。費用科目で処理すると、必要経費でない支出が経費に混ざります。
貸借対照表の科目は、月次で残高の中身を1件ずつ説明できる状態にしておくことが選び方以上に重要です。手順は残高照合のやり方で科目別に書いています。
自社の科目ルールを作る手順:科目辞書テンプレート
ここまでの原則を、担当者が変わっても同じ判断ができる形に落とします。作るのは科目マスタの整理と科目辞書の2つで、半日あれば初版ができます。
手順1:科目マスタを棚卸しして、1科目1定義にする
会計ソフトの科目一覧を開き、直近1年で使っていない科目を非表示にします。使っている科目は、1行ずつ「何を入れる科目か」を一文で書きます。書けない科目は、定義が曖昧なまま使われている科目です。このとき、同じ内容が2科目に散っているものを1つに寄せます。「通信費」と「支払手数料」の両方にクラウド利用料があるなら、どちらかに統一するか、システム利用料を新設して両方から移します。
手順2:科目は増やさず、補助科目と摘要で追う
月次で細かく見たい単位は、科目を増やすより補助科目で持ちます。広告宣伝費の下に「Web広告」「展示会」「印刷物」、外注費の下に取引先別。科目を増やすと損益計算書の行が増えて読みにくくなり、補助科目なら科目の合計は変えずに内訳だけ追えます。摘要には検索できるキーワード(サービス名・取引先名・月分)を必ず入れます。科目辞書はこの摘要キーワードを起点に引くので、摘要の書き方が辞書の精度を決めます。
手順3:科目辞書を表で持つ
科目辞書は、摘要のキーワードから科目と税区分を引く表です。この5列で始めてください。
| 摘要キーワード | 科目 | 補助科目 | 消費税の税区分 | 決めた日・根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 〇〇クラウド 月額 | 支払手数料 | システム利用料 | 課税仕入 10% | 2026-10-01 手順1で通信費から統一 |
| 業界団体 年会費 | 諸会費 | — | 不課税 | 通常会費(No.5382)。対価性がないため不課税 |
| 会食 取引先 1人1万円以下 | 会議費 | — | 課税仕入 10% | No.5265。参加者名の記録を必須とする |
| 会食 取引先 1人1万円超 | 交際費 | 飲食 | 課税仕入 10% | No.5265。接待飲食費として別表で集計 |
| 収入印紙 | 租税公課 | — | 非課税 | No.5300。郵便局・法務局等で購入した印紙は非課税 |
科目と税区分をセットで決めるのがポイントです。科目だけ決めて税区分を担当者任せにすると、同じ諸会費が課税仕入と不課税に割れて消費税の計算が狂います。税区分の判定順序は消費税の税区分の判定にまとめています。「決めた日・根拠」の列は、後任が「なぜこの科目なのか」を辿るためのもので、税務基準があるものはタックスアンサーの番号を、自社の任意の決定なら「手順1で統一」のように書きます。
辞書は最初から網羅しようとせず、実際に迷った取引を月に数行ずつ追記していきます。半年で50行前後になれば、日常の仕訳で迷う場面はほぼなくなります。
手順4:変更は期首に、理由を残して
科目の統廃合や新設は期首に行い、前期の同じ支出をどの科目から移したかを辞書に残します。期の途中でやむを得ず変えるときは、その期の過去仕訳を新しい科目に付け替えて、期首から一貫した状態にします。中小会計要領が変更に合理的な理由と注記を求めているのは、比較可能性を守るためです。金融機関に決算書を出している会社は、科目構成の変更が決算書の見え方に影響するので、顧問税理士と事前に決めてください。
手順5:月次で辞書どおりに仕訳されているかを確認する
辞書を作っても、仕訳がそのとおりに入っていなければ意味がありません。月次の締めで見る箇所は3つ。雑費の残高と内訳(毎月続く支出が混ざっていないか)、前年同月比で急増・急減した科目(科目の付け替えが原因でないか)、交際費・寄附金・租税公課の摘要(税務基準の要件を満たす記録があるか)。月次決算のチェックリストにこの3点を加えておくと、決算時に科目の付け替えで手戻りすることがなくなります。計上時期のずれは科目とは別の論点なので期ずれとはを参照してください。
会計事務所との分担:設計は税理士と、日々のチェックは仕組みで
科目の設計そのものは、顧問税理士・会計事務所と決めるのが現実的です。交際費等・寄附金・修繕費の判定、消費税の税区分、金融機関向けの決算書の見せ方は税務と会計の専門判断で、税務上の判断は税理士の領域です。経理側が用意すべきなのは、この記事の科目辞書と、迷った取引の一覧です。「この取引はどの科目ですか」と1件ずつ聞くより、辞書の案を作って「この表で問題ないか」と確認するほうが、事務所側の時間も短くて済みます。
設計が決まったあとの日々の運用、つまり仕訳が辞書どおりに入っているかの確認は、人が全件を見るのは現実的ではありません。当社の仕訳チェックは、勘定科目と消費税の税区分の誤り、二重計上、計上漏れ、期ずれを観点に、サンプルではなく全仕訳をAIでチェックし、修正が必要な仕訳を根拠つきで報告するメニューです。記帳は自社や顧問の会計事務所で行い、チェックだけを任せる使い方ができます。記帳から任せる場合の業務範囲と分担は経理代行 完全ガイドで整理しています。
勘定科目の選び方に唯一の正解はなく、あるのは順序です。税務で区別が求められる科目を先に固定し、残りは月次で見たい単位で決め、決めたら継続する。この3原則と5つの問いを科目辞書に落とせば、担当者が変わっても同じ仕訳が続きます。まずは、この記事の30取引の一覧から自社に当てはまる行を抜き出して、辞書の最初の10行にしてください。
よくある質問
- Q. 勘定科目を間違えると、税務調査で問題になりますか?
- 科目名そのもので税額が変わることは原則ありません。法人税は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算した所得に課税され、損金になるかどうかは科目名ではなく支出の内容で決まります。通信費に入れるべき支出を消耗品費に入れても、どちらも損金であることに変わりはないので、所得は動きません。ただし例外があります。交際費等・寄附金・租税公課のうち損金不算入となる税金・修繕費と資本的支出・給与として源泉徴収の対象になる支出は、科目の付け方が申告書の別表計算や源泉徴収に直結します。たとえば1人1万2,000円の取引先との飲食を会議費にしても、税務上は交際費等として損金不算入額の計算に含めなければなりません。この記事の「税額に影響する科目」の6グループだけは、社内ルールより税務上の区分を優先して決めてください。個別の取引が交際費等や寄附金に当たるかの判断は税理士の領域なので、迷う案件は顧問税理士に確認してください。
- Q. 会計ソフトの初期設定にない勘定科目を、自社で新しく作ってもよいですか?
- 作ってかまいません。勘定科目は法令で一覧が固定されているものではなく、会社計算規則が定める損益計算書の区分(売上高・売上原価・販売費及び一般管理費・営業外収益・営業外費用・特別利益・特別損失)に沿っていれば、その中の科目名は会社が決めます。実務で新設が多いのは、採用費(求人広告や人材紹介手数料を広告宣伝費から分けたい)、研修費、業務委託費(外注費のうち人的サービスを分けたい)、システム利用料(クラウドサービスの月額を通信費や支払手数料から分けたい)などです。新設するときは、どの区分に属するか(販管費か営業外か)、消費税の税区分を何にするか、既存のどの科目から移すかを決め、期首から適用します。期の途中で科目を増やして過去の仕訳をそのままにすると、同じ支出が2つの科目に分かれて前年同月比が使えなくなります。金融機関に決算書を提出している会社は、科目の新設や変更が決算書の見え方に影響するので、顧問税理士と決めてから動かしてください。
- Q. 個人事業主と法人で、勘定科目の選び方は違いますか?
- 考え方は同じですが、出発点になる科目の一覧が違います。個人事業主は所得税の青色申告決算書(または収支内訳書)に印字された科目が事実上の標準で、租税公課・荷造運賃・水道光熱費・旅費交通費・通信費・広告宣伝費・接待交際費・損害保険料・修繕費・消耗品費・減価償却費・福利厚生費・給料賃金・外注工賃・利子割引料・地代家賃・貸倒金・雑費が並んでいます。この枠に収まらない支出は空欄に科目を追加して記載します。法人にはこうした印字済みの一覧がなく、会計ソフトの初期科目を出発点に会社が決めます。個人事業主に特有なのは事業主貸・事業主借で、生活費の引き出しや事業用口座からの私的な支払いは費用ではなくこの科目で処理します。もう1つの違いは交際費で、法人は交際費等の損金不算入制度(1人1万円以下の飲食費の除外や中小法人の定額控除限度額)がありますが、個人事業主の必要経費にはこの限度額の仕組みがありません。どちらの場合も、必要経費・損金になるかどうかは科目名でなく支出の内容で決まる点は共通です。