減価償却の計算方法:定額法・定率法の計算式と仕訳例
執筆: 4649編集部
減価償却の計算式は、方法ごとに1本ずつしかありません。定額法は「取得価額 × 定額法の償却率」、定率法は「未償却残高 × 定率法の償却率」。どちらも償却率は国税庁の減価償却資産の償却率等表から耐用年数で引くだけで、自分で計算するものではありません。
つまずくのは式ではなく、その周辺です。定率法は途中で計算式が切り替わる。期中に買えば月割になる。そもそも取得価額によっては資産計上しない道もある。この記事では、120万円・耐用年数5年の資産を両方式で5年分通して計算し、実務で間違いが出る場所を順に潰します。
計算の前に、耐用年数と償却率を引く
必要な数字は3つです。取得価額、耐用年数、償却率。
耐用年数は自分で決めるものではなく、財務省令の別表で資産の種類ごとに定められています。国税庁の主な減価償却資産の耐用年数表から、構造・用途・細目の3階層で引きます。「パソコン」なら器具及び備品の「電子計算機」で、サーバー用以外のものは4年。金属製の事務机は15年、一般用の普通乗用車(社用車)は6年。緑ナンバーの運送事業用は別の区分で、大型乗用車が5年、その他のものは4年です。
耐用年数が決まれば、償却率は償却率等表で一意に決まります。耐用年数5年なら、定額法0.200、定率法0.400。定率法の欄にはもう2つ、改定償却率0.500と保証率0.10800が並んでいます。この2つが後で効いてきます。
なお、平成24年4月1日以後に取得した資産の定率法は、定額法の償却率を2倍した200%定率法です。それ以前の2.5倍(250%定率法)から引き下げられました(No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法)。古い解説書や社内の計算シートが250%のまま残っていることがあります。
定額法:取得価額 × 償却率。最終年だけ1円を残す
取得価額1,200,000円、耐用年数5年、期首に事業の用に供した資産で見ます。償却率は0.200。
1,200,000 × 0.200 = 240,000円。これが毎年の償却限度額です。
| 年 | 償却費 | 償却累計額 | 期末簿価 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 240,000 | 240,000 | 960,000 |
| 2年目 | 240,000 | 480,000 | 720,000 |
| 3年目 | 240,000 | 720,000 | 480,000 |
| 4年目 | 240,000 | 960,000 | 240,000 |
| 5年目 | 239,999 | 1,199,999 | 1 |
5年目だけ1円少ないのは、備忘価額を残すためです。帳簿価額をゼロにすると、その資産が台帳から見えなくなる。まだ使っている資産を追跡できるように、除却するまで1円を残します。
計算そのものは単純ですが、毎期の数字が変わらないぶん誤りに気づきにくい。台帳の1行が漏れていても、試算表の減価償却費は「去年と同じくらい」に見えます。
定率法:償却保証額を下回った年に、計算式が入れ替わる
同じ1,200,000円・耐用年数5年を定率法で計算します。償却率0.400、改定償却率0.500、保証率0.10800。
最初に償却保証額を出します。取得価額 × 保証率なので、1,200,000 × 0.10800 = 129,600円。これが「1年あたりこれ以上は償却させる」という下限です。
毎年、未償却残高 × 0.400 で計算した金額(調整前償却額)を、この129,600円と比べます。上回っていれば調整前償却額がそのまま限度額。下回った年から、計算式が入れ替わります。
| 年 | 調整前償却額の計算 | 保証額との比較 | 償却費 | 期末簿価 |
|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 1,200,000 × 0.400 = 480,000 | ≧ 129,600 | 480,000 | 720,000 |
| 2年目 | 720,000 × 0.400 = 288,000 | ≧ 129,600 | 288,000 | 432,000 |
| 3年目 | 432,000 × 0.400 = 172,800 | ≧ 129,600 | 172,800 | 259,200 |
| 4年目 | 259,200 × 0.400 = 103,680 | < 129,600 | 129,600 | 129,600 |
| 5年目 | — | — | 129,599 | 1 |
4年目で103,680円が償却保証額を割りました。この年以後は、改定取得価額 × 改定償却率に切り替わります。改定取得価額とは、切り替わる年の期首未償却残高のこと。ここでは259,200円です。259,200 × 0.500 = 129,600円。5年目も同じ129,600円ですが、備忘価額1円を残すので129,599円になります。
合計すると480,000 + 288,000 + 172,800 + 129,600 + 129,599 = 1,199,999円。定額法と同じく、耐用年数の終わりに1円だけ残ります。
この切り替えを入れずに未償却残高 × 0.400 を続けると、4年目が終わって155,520円、5年目が終わってもまだ93,312円が簿価として残ります。国税庁の説明も「調整前償却額が償却保証額に満たない場合は、改定取得価額に改定償却率を乗じて計算した金額が各事業年度の償却限度額となる」と、この2段構えを明示しています(No.5410、所得税はNo.2106 定額法と定率法による減価償却)。
会計ソフトに登録してあれば自動で切り替わります。手作業の計算シートで資産を管理している場合は、切り替え年を見落として簿価が残ったままになる。定率法の資産をExcelで持っているなら、償却保証額の列を必ず作ってください。
どちらを使うかは、資産の種類と届出で決まる
選べる場面と選べない場面があります。
選べない資産があります。建物は定額法のみ(平成19年4月1日以後に取得したもの。平成10年4月1日から平成19年3月31日までの取得は旧定額法)。建物附属設備と構築物も、平成28年4月1日以後に取得したものは定額法だけになりました(平成28年度税制改正 減価償却の方法)。ソフトウエアなどの無形固定資産も定額法です。内装工事を「建物附属設備」で登録した瞬間、定率法の選択肢は消えます。
選べる資産は、機械装置・器具備品・車両運搬具など。税務署に償却方法の届出書を出せば選択でき、出さなければ法定の償却方法になります。法人の法定償却方法は定率法、個人事業主は定額法(No.5409 減価償却資産の償却方法の選定手続き)。
実務で問題になるのは、届出と会計ソフトの設定がずれているケースです。資産マスタの既定値が定率法のまま、届出は定額法で出している。登録した人が届出の存在を知らなければ、ずれは何年も残ります。年に一度、届出書の控えと資産マスタを突き合わせておけば済む話です。
期中に買った資産は月割。起算点は「事業の用に供した日」
初年度の償却限度額は、事業の用に供した月から期末までの月数で按分します。3月決算の会社が10月に使い始めたなら6か月分。
定額法なら 240,000 × 6/12 = 120,000円。定率法の初年度も同じく、480,000 × 6/12 = 240,000円です。
間違いが集中するのは月数そのものではなく、起算点です。購入日でも、支払日でも、検収日でもありません。実際に事業に使い始めた日です。3月末に納品された製造設備が、試運転を経て稼働したのが4月なら、償却は翌期から。逆に、9月に届いてすぐ使い始めた機械を「請求書が10月だから10月供用」で登録すると、1か月分の償却が落ちます。
この論点は期ずれそのものです。固定資産の場合、ずれが1期分の損益に乗り、しかも翌期以降の償却スケジュール全体が後ろにずれるので、影響が長く残ります。納品書と稼働の実態が違いそうな資産は、登録時に現場へ確認しておくのが結局は早い。
仕訳は直接法か間接法。月次では12分の1ずつ乗せる
年間の償却費が240,000円と決まった資産の仕訳です。
間接法(減価償却累計額を使う):
減価償却費 240,000 / 減価償却累計額 240,000
直接法(資産の帳簿価額を直接減らす):
減価償却費 240,000 / 工具器具備品 240,000
法人の実務では間接法が一般的です。貸借対照表に取得価額と累計額が並ぶので、資産の古さが読み取れます。
月次決算では、年額を12で割って毎月20,000円ずつ計上します。年に1回まとめて計上すると、決算月だけ利益が沈む。期中に取得した資産は、その月から月割で追加します。期末には年額の確定計算と差額調整を入れますが、この差額が毎年大きく出るなら、期中の資産登録が期末にまとめて行われている証拠です。月次の締めの流れ全体は月次決算 完全ガイドにまとめました。
そもそも償却しない道:10万円・20万円・40万円の分岐
取得価額によっては、減価償却の計算自体が不要になります。判定は取得価額の区分で、しかも通常1単位として取引される単位ごとに行います。応接セットならテーブルと椅子で1組、カーテンなら1部屋分の合計で見る(No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示)。モニターとPC本体を別々に買っても、セットで機能するなら合算の余地があります。
10万円未満は少額の減価償却資産として、事業供用時に全額を損金(必要経費)にできます。科目は消耗品費などで、資産計上しません。この境界の扱いは消耗品費と雑費の違いでも触れています。
20万円未満は一括償却資産にできます。取得価額の合計額を3年間で3分の1ずつ均等償却する方法で、月割はしません。固定資産税(償却資産)の課税対象外になるのが、この選択肢の実質的なメリットです。
40万円未満は、青色申告書を提出する中小企業者等であれば全額を損金算入できます。白色申告では使えません。適用するには、取得価額に相当する金額を損金経理したうえで、確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額等に関する明細書(法人は別表十六(七))を添付する必要があります。令和8年度税制改正で取得価額の基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、令和8年4月1日以後に取得して事業の用に供する資産から適用されます。年間の合計限度額300万円は据え置き。適用期限は3年延長されて令和11年3月31日まで、対象法人からは常時使用する従業員数が400人を超える法人が除外されました(中小企業庁 少額減価償却資産の特例、パンフレット)。令和8年3月31日以前に取得した資産は従来どおり30万円未満が基準です(No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)。
この基準は事業年度単位ではなく資産ごとの取得日で判定します。そのため、事業年度が2026年4月1日をまたぐ会社(3月決算以外)は、同じ事業年度の中に30万円基準の資産と40万円基準の資産が混在します。12月決算なら、2026年1〜3月に取得した資産は30万円基準、4月以後に取得した資産は40万円基準。35万円のノートPCを3月に買ったか4月に買ったかで扱いが変わる。取得日の記録が曖昧な資産が出たら、この期だけは検収記録まで遡って確認してください。
中古資産は、耐用年数の段階から変わる
新品と同じ耐用年数を使うと、償却が大きく遅れます。中古資産は、使用可能期間を見積もるのが原則ですが、見積りが困難なときは簡便法が使えます(No.5404 中古資産の耐用年数)。
- 法定耐用年数の全部を経過した資産: 法定耐用年数 × 20%
- 一部を経過した資産: (法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
いずれも1年未満の端数は切り捨て、計算結果が2年未満なら2年です。
4年落ちの中古車(法定耐用年数6年)で試すと、(6 − 4) + 4 × 0.2 = 2.8 → 2年。耐用年数2年の定率法償却率は1.000なので、期首に事業供用すれば1年で取得価額から備忘価額1円を引いた額が償却費になります。よく知られた「4年落ちの中古車」の話は、この計算の帰結です。
ただし、事業供用時の資本的支出がその中古資産の取得価額の50%を超える場合は簡便法を使えません。再取得価額の50%を超える改良をしたなら、法定耐用年数によります。中古の機械を買ってから大がかりな整備を入れた、というケースは要注意です。
計算が合わないとき、見る場所は3つ
会計の減価償却費と固定資産台帳の合計が一致しない。決算前によくある事態ですが、原因はだいたい決まっています。
期中に取得した資産が台帳に入っていない。請求書が経理に回っていない、あるいは修繕費で費用処理されていて資産計上されていない。20万円を超える支出を修繕費で落としている行がないか、当期の修繕費の明細を金額の大きい順に見れば早く見つかります。
除却した資産が台帳に残っている。現物はもう無いのに償却費だけが計上され続けている。簿価1円で止まっている行と、償却中の行の両方に混ざります。
償却方法・耐用年数の登録誤り。内装工事を器具備品で登録した、中古資産に新品の耐用年数を当てた、届出と違う方法で計算している。これは差額として現れず、金額が静かに間違い続けるタイプの誤りです。
1つ目と2つ目は、残高照合のプロセスに固定資産の突合を入れれば月次で拾えます。3つ目は登録時にしか防げません。
固定資産は、月次では手が回らず期末にまとめて処理されがちな領域です。当社の4649固定資産は、台帳の整備から取得・除却の登録、耐用年数・償却方法の設定、月次・年次の減価償却費の計上までを引き受けるメニューで、台帳が長年整備できていない状態からの整理にも対応します。登録の根拠資料と判断の履歴を残して納品するので、税務調査や監査で根拠をたどれます。記帳や決算は自社・顧問の会計事務所で行い、固定資産まわりだけを切り出して任せる使い方ができます。
減価償却の計算で迷うのは、式を知らないからではありません。償却率表を引く、償却保証額と比べる、供用日から月割する、取得価額で区分を判定する。この4つの手順をどれか飛ばしたときに数字が狂います。特に2026年は、4月1日を境に少額資産の基準が30万円と40万円に分かれる年です。取得日の記録を丁寧に残しておいてください。
なお、この記事は一般的な制度と実務の解説です。償却方法の選択・変更の届出、特例の適用可否、中古資産の耐用年数の見積り、資本的支出と修繕費の区分といった個別の判断は税務判断そのものになるため、顧問税理士にご相談ください。
よくある質問
- Q. 定額法と定率法は、自分で選べるのですか?
- 資産の種類による制約と、届出の有無の2段階で決まります。まず建物、建物附属設備、構築物、そしてソフトウエアなどの無形固定資産は定額法しか使えません。建物は平成19年4月1日以後に取得したものが定額法(平成10年4月1日から平成19年3月31日までの取得なら旧定額法)、建物附属設備と構築物は平成28年4月1日以後に取得したものが定額法です。それ以外の機械装置・器具備品・車両運搬具などは、税務署へ「減価償却資産の償却方法の届出書」を出せば選べます。届出をしなければ法定の償却方法が適用され、法人は定率法、個人事業主は定額法になります。手続は国税庁のタックスアンサー No.5409 を確認してください。会計ソフトの資産マスタは登録時の既定値が入るだけなので、届出の内容と一致しているかは人が確かめる必要があります。
- Q. 期の途中で買った資産は、初年度も1年分の償却費を計上してよいのですか?
- いけません。初年度の償却限度額は、事業の用に供した月から事業年度末までの月数で按分します。3月決算の会社が10月に事業供用したなら6か月分です。取得価額120万円・耐用年数5年・定額法(償却率0.200)なら、年額24万円に6/12を掛けた12万円が初年度の限度額になります。起算点は購入日でも支払日でも検収日でもなく、事業の用に供した日です。3月20日に納品されたが実際に稼働したのは4月だった、という設備は翌期からの償却になります。納品書の日付だけで登録すると、償却開始が1期ずれます。
- Q. 耐用年数を過ぎた資産は、帳簿からどう扱えばよいですか?
- 帳簿価額1円(備忘価額)を残したまま、固定資産台帳と貸借対照表に残し続けます。最終年の償却費を「残高がちょうどゼロになる額」ではなく「1円を残す額」にするのはこのためです。取得価額120万円・耐用年数5年・定額法なら、5年目の償却費は24万円ではなく23万9,999円になります。この1円を消してよいのは、その資産を除却または売却したときです。逆に言えば、簿価1円の行が台帳に大量に残っている会社は、すでに捨てた資産が落ちていない可能性があります。償却が終わった資産の一覧を年1回、現物の有無と突き合わせておくと、除却損の計上漏れと固定資産税(償却資産)の申告誤りをまとめて防げます。