固定資産台帳の作り方:台帳がない状態から整備する手順
執筆: 4649編集部
固定資産台帳が無い。あるいは数年前から更新が止まっている。この状態から作り直すとき、現物の棚卸から始めると途中で必ず止まります。棚卸で分かるのは「そこに何があるか」だけで、その資産をいくらで買い、いつから償却しているかは現場の誰も知らないからです。
順序は逆にします。法人税申告書の別表十六と償却資産申告書から骨格を復元し、貸借対照表の残高と突き合わせ、現物確認は最後。この記事では、台帳に持つべき列、資料からの復元手順、現物と合わなかったときの処理までを、整備されていない状態を前提に並べます。
様式は決まっていない。決まっているのは保存義務のほう
固定資産台帳の様式は法令で定められていません。会計ソフトが出力する列も製品ごとに違います。
決まっているのは、帳簿としての位置づけのほうです。国税庁は法人が保存すべき「帳簿」の例として、総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳と並べて固定資産台帳を挙げています。保存期間は確定申告書の提出期限の翌日から7年間。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度は10年間です(No.5930 帳簿書類等の保存期間)。作るかどうかを選べる補助資料ではない、ということです。
様式が自由なぶん、何を載せるかは目的から決めるしかありません。台帳に求められる機能は3つです。減価償却費を後から再計算できること。現物を特定できること。除却まで追えること。 この3つを満たさない列は要らないし、満たさない台帳は整備したとは言えません。
台帳に持つ17項目:再計算と棚卸の両方に耐える列
| 列 | 内容 | 抜けると起きること |
|---|---|---|
| 資産番号 | 管理番号。現物の管理シールと一致させる | 同型の機器を区別できない |
| 資産名称・型番 | 「ノートPC」ではなく機種名まで | 棚卸で現物を特定できない |
| 数量・単位 | 組で取得したものは1組として | 一部だけ処分したときに追えない |
| 勘定科目 | 建物附属設備/工具器具備品 など | 貸借対照表と突合できない |
| 資産の種類・構造・用途・細目 | 耐用年数表を引いた3階層をそのまま | 耐用年数の根拠が消える |
| 取得年月日 | 検収日を基準に | 少額資産の基準判定ができない |
| 事業供用年月日 | 実際に使い始めた日 | 償却開始が1期ずれる |
| 取得価額 | 引取運賃・据付費など付随費用込み | 償却限度額が狂う |
| 耐用年数 | 中古資産は見積り・簡便法の別も | 償却年数が説明できない |
| 償却方法 | 定額法/定率法。届出と一致させる | 届出と違う計算が何年も続く |
| 償却率・改定償却率・保証率 | 定率法は3つとも持つ | 切替年を見落として簿価が残る |
| 期首帳簿価額 | 前期末の期末帳簿価額と一致させる | 期の連続性が切れる |
| 当期償却費 | 月次計上額の年間合計 | 試算表と合わない |
| 期末帳簿価額 | 備忘価額1円を含む | 償却済み資産が見えなくなる |
| 設置場所・管理部署 | 償却資産申告の所在地にも使う | 棚卸ができない |
| 償却資産申告の区分 | 対象/対象外(10万円未満・一括償却) | 申告漏れ・二重申告 |
| 除却・売却年月日と事由 | 行は消さずに残す | 過去の処分が追えない |
根拠資料(請求書番号・稟議番号)の列を末尾に足すと、税務調査や監査で聞かれたときに現物・帳簿・証憑が1行でつながります。当社の4649固定資産で台帳を整備するときも、この根拠のひもづけは必ず残す設計にしています。
抜けやすいのは、太字にしておきたい3列です。事業供用年月日は取得年月日と別に持ちます。3月決算の会社なら、3月末に納品され4月に稼働した設備は、償却の開始が翌期。同じ列に混ぜると1期分ずれます。設置場所が無い台帳は棚卸に使えません。そして償却資産申告の区分は、後述のとおり会計と課税で対象範囲がずれるために必要です。
定率法の資産で償却率だけを持っている台帳も危ない。改定償却率と保証率が無いと、調整前償却額が償却保証額を下回った年の切り替えができません。3つとも減価償却資産の償却率等表に並んでいます。計算の中身は減価償却の計算方法に書きました。
復元の起点は、現物ではなく過去の申告書
台帳が無い会社にも、たいてい次の3つは残っています。
法人税申告書の別表十六。 減価償却資産の償却額を計算する明細書で、定額法は別表十六(一)、定率法は別表十六(二)。資産の種類・取得年月日・取得価額・耐用年数・期首帳簿価額・当期の償却額が資産ごとに並んでいます(別表十六(一)の記載要領)。事実上、台帳の骨格そのものです。一括償却資産は別表十六(八)、中小企業者等の少額減価償却資産の特例を使った資産は別表十六(七)に載ります。
償却資産申告書の種類別明細書。 市区町村に出しているもので、所在地と数量が入っています。これは法人税の申告書にはない情報です。
貸借対照表の固定資産残高。 復元した台帳の期末簿価合計と一致すべき数字。突合の相手方として使います。
手順としては、直近期の別表十六を1行ずつ表計算ソフトに起こし、償却資産申告書で所在地と数量を埋め、請求書・契約書・稟議書で型番と根拠資料番号を補います。取得年月日の古い順ではなく、取得価額の大きい順に潰すのが早い。金額上位2割の資産で、固定資産残高の大半が説明できることがほとんどです。
過去の別表十六が5期分あるなら、直近期を骨格にして、そこに載っていない資産を古い期の別表で拾います。除却済みの資産は直近期には出てきません。
資料が残っていない資産は、差額を1行にまとめて見える化する
復元しきれない資産は必ず出ます。10年前に取得した設備の請求書が無い、税理士の交代で過年度資料が引き継がれていない、といった状況です。
ここで推定額を入れないでください。減価償却費は取得価額を基礎に計算するため、根拠の無い金額を置くと、その資産の償却限度額の計算根拠が消えます。やることは逆で、判明した資産を積み上げ、貸借対照表の固定資産残高との差額を「内容不明分」として1行に集約する。差額がいくらで、どの科目に紛れているかを可視化した状態で止めます。
そのうえで、差額に対応する現物があるかを確認します。現物が特定できれば取得価額の資料を探し直す余地がある。現物が無いなら、過年度の除却が計上されていない可能性が高い。ただし、その差額をいつの期にどう処理するか、除却損として損金算入できるかは税務判断そのものです。台帳の整備としては差額を明示するところまでを担当し、処理は顧問税理士と決めてください。
現物突合は、台帳から現物と現物から台帳の両方向でやる
台帳の骨格ができたら現物確認に入ります。片方向だけでは足りません。
台帳から現物を追うと、除却漏れが見つかります。現物から台帳を追うと、台帳に載っていない資産(簿外資産)が見つかります。後者を飛ばす会社が多いのですが、修繕費で処理された設備や、現場が直接購入した機器はここでしか出てきません。
出てくる差異は3類型です。
| 差異 | よくある原因 | 台帳側の処理 |
|---|---|---|
| 台帳にあるが現物が無い | 除却・廃棄が経理に伝わっていない | 処分時期の資料(廃棄伝票・リース満了通知など)を集め、除却の計上時期は税理士と確認 |
| 現物があるが台帳に無い | 修繕費・消耗品費で費用処理、現場調達 | 請求書を遡って取得価額と供用日を特定し、資産計上の要否を確認 |
| 数量・場所が合わない | 移設・部署間の移動が未記録 | 台帳の設置場所を更新。償却資産申告の所在地に影響 |
全資産を一度に見ようとすると終わりません。初回は取得価額100万円以上、あるいは期末簿価が残っている資産だけを対象にして、翌期に範囲を広げる。簿価1円で止まっている行だけを抜き出した突合は、費用対効果がとくに高い作業です。すでに捨てた資産が延々と残っている典型的な場所で、除却損の計上漏れと償却資産申告の誤りが同時に見つかります。
会計・法人税・償却資産申告で、載る範囲がずれる
同じ「固定資産」でも、3つの帳面で対象が一致しません。ここを1つの台帳で管理しようとして混乱するケースが多い。
償却資産の固定資産税は、毎年1月1日現在で所有している事業用資産が対象です。申告期限は原則として同年1月31日(休日にあたる年は翌開庁日で、令和8年度は2月2日でした)。同一の市区町村内で課税標準額の合計が150万円未満なら課税されませんが、免税点未満でも申告そのものは必要です(東京都主税局 固定資産税(償却資産)、制度の位置づけは総務省 固定資産税の概要)。
ずれるのは次の3か所です。取得価額10万円未満で一時に損金算入した資産と、20万円未満で3年間の一括償却を選んだ資産は、地方税法341条4号・同法施行令49条により償却資産申告の対象から除かれます。逆に、中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額損金算入した資産は、会計上は資産に残らないのに申告の対象になります。この特例の取得価額基準は、令和8年4月1日以後に取得して事業の用に供する資産から30万円未満が40万円未満に引き上げられました。
だから台帳には、費用処理した少額資産も「償却資産申告の対象」区分を付けて残しておく必要があります。会計上の固定資産だけを台帳に載せていると、40万円未満の特例を使った資産が申告から丸ごと抜けます。
崩れない台帳にするには、登録の起点を1か所に決める
整備しても、運用が変わらなければ1年で元に戻ります。効くのは仕組みのほうです。
登録の起点を請求書の受領時に置く。 10万円以上の請求書は、支払処理の前に経理が資産計上の要否を判定する。10万〜20万円の帯は一括償却を選ぶかどうか、20万円以上は通常の資産計上かどうかの判定が要るので、閾値は10万円に置くほうが漏れません。現場からの申告や期末のヒアリングを起点にすると、判定が遅れて期ずれが発生します。固定資産の期ずれは損益が1期分ずれるだけでなく、償却スケジュール全体が後ろにずれるので影響が長く残ります(期ずれとは)。
除却は現場の申告を待たない。 廃棄業者の伝票、リース満了通知、オフィスのレイアウト変更、退職者のPC返却。これらを除却の検知イベントとして経理に流す経路を作っておきます。
月次で突合する。 貸借対照表の固定資産残高と台帳の期末簿価合計を毎月合わせ、減価償却費は年額の12分の1を毎月計上する。期末にまとめて計上すると、差額が出たときに原因期間を特定できません。突合の型は残高照合のやり方、月次の締め全体の流れは月次決算 完全ガイドにまとめています。
年1回、簿価1円の行を現物確認する。 償却が終わった資産の一覧と現物を突き合わせるだけで、翌年以降の差異はかなり減ります。
固定資産台帳の整備が終わらない理由は、たいてい着手の順番にあります。現物から始めるから取得価額が埋まらず、埋まらないから台帳が完成せず、完成しないから運用も始まらない。別表十六を1行ずつ起こす作業は地味ですが、そこに取得価額と耐用年数が揃っている以上、ここを起点にするのが最短です。
この復元と、その後の維持を社内だけで抱えきれないなら、外に出す判断もあります。当社の4649固定資産は、整備されていない状態からの現状整理と、取得・除却・移動の登録、減価償却費の計上までを引き受けるサービスです。
なお、この記事は一般的な制度と実務の解説です。復元できなかった差額の処理、除却損の計上時期、償却方法や耐用年数の選択、少額資産の特例の適用可否といった個別の判断は税務判断にあたるため、顧問税理士にご相談ください。
よくある質問
- Q. 固定資産台帳はエクセルで作ってもよいのですか?
- 構いません。固定資産台帳の様式は法令で定められておらず、表計算ソフトで作っても会計ソフトの機能で作っても帳簿としての扱いは変わりません。ただし2点あります。1つは保存方法で、自分が最初から一貫してパソコンで作成した帳簿を電子データのまま保存するには、電子帳簿等保存制度の要件を満たす必要があります(国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトを確認してください)。要件を満たさない場合は出力した書面での保存になります。もう1つは定率法の資産です。エクセルで管理すると、調整前償却額が償却保証額を下回った年に改定償却率へ切り替える処理が手作業になり、見落とすと簿価が残り続けます。定率法の資産があるなら、償却保証額の列と「切替済み」のフラグ列を必ず作ってください。
- Q. 取得価額が分からない古い資産は、台帳にどう載せればよいですか?
- 推定額で埋めないでください。減価償却費は取得価額を基礎に計算するため、根拠のない金額を入れると償却限度額の計算根拠そのものが失われます。まず法人税申告書の別表十六、償却資産申告書の種類別明細書、過去の総勘定元帳や請求書控えを探し、1つでも取得価額の記載がある資料が見つかればそれを採用します。どの資料にも残っていない資産は、判明分を積み上げたうえで貸借対照表の残高との差額を「内容不明分」として1行に集約し、現物の有無を確認したうえで、その後の会計・税務上の取扱いは顧問税理士と決めてください。差額を黙って除却損にする、あるいは償却を止めて放置する、のどちらも避けたい対応です。
- Q. 償却資産申告書があれば、固定資産台帳の代わりになりますか?
- なりません。載る範囲が違うからです。償却資産申告の対象からは、取得価額10万円未満で一時に損金算入した資産と、20万円未満で3年間の一括償却を選んだ資産が除かれます。一方、中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額を損金算入した資産は、会計上は資産に残らないのに償却資産申告の対象になります。さらに償却資産の評価は取得価額を基礎に定率法で行われ、法人税の償却方法や耐用年数の選択とも一致しません。実務的には、固定資産台帳を正本として持ち、そこに「償却資産申告の対象・対象外」の区分列を1つ加えて、申告書はその列で抽出して作るのが確実です。逆向き(申告書から台帳を起こす)は、所在地と数量の情報が取れるので復元の材料にはなりますが、これだけでは足りません。