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会計事務所向け

製販分離は所内か外部委託か:会計事務所の比較表と判断基準

執筆: 4649編集部

会計事務所が製販分離を進めるとき、「製」を所内のチームで担うか、外部委託で分担するかは、製の量、事務所を伸ばしたい速さ、仕組みを整えて回し続けられる人が所内にいるかの3つでおおむね決まります。どちらか一方に決める必要はなく、工程や顧問先ごとに組み合わせる事務所もあります。

製販分離は、資料の回収・整理、記帳、決算書や申告書の作成(製)と、新しいお客様の獲得や顧問先との面談・相談・提案(販)を、別の担当に分ける体制です(製販一体との違い、税理士法に沿った線引き、メリットと注意点、分けたあとの情報のつなぎ方は会計事務所の製販分離とは?にまとめました)。分けると決めたあとに来る問いが、製をどこで担うかです。当社は会計事務所から記帳などの実務を受託する、外部委託の側の事業者です。そのうえで、所内で分けるほうが向いている事務所があることも含めて、両方の良さと難しさを並べました。

製をどこで担うか:所内で分ける方法と、外部委託で分担する方法

所内で分ける方法は、事務所の中に製を担うチームをつくります。たとえば、資料の回収と入力をパートや在宅の職員が担い、残高照合と試算表の確認を経験のある職員が担う。販の担当者は、顧問先との面談と新しいお客様の獲得に回ります。

外部委託で分担する方法は、製の一部を事務所の外の委託先に任せます。資料の整理や記帳を委託先が担い、事務所は納品された帳簿の確認と、販に時間を使います。

どちらの方法でも、製のすべてを手放せるわけではありません。申告書などの税務書類の作成は税理士法第2条第1項の税理士業務で、第52条により、税理士または税理士法人でない者は原則として行えません(国税庁の税理士制度のQ&A 問6-1も参照)。税理士でない委託先に任せられるのは、資料の整理や記帳、決算書の作成といった第2条第2項の付随業務と、法律上の制限がない事務作業までです。申告書の作成と税務判断は、どちらの方法でも税理士の手元に残ります。

比較表:所内で分ける場合と、外部委託の場合

観点所内で分ける外部委託で分担する
始めるまで工程の設計、手順の書き出し、担い手の確保と教育に時間がかかる委託先の仕組みに乗って始められる。処理の方針と資料の受け渡しのすり合わせは要る
費用の形製の人件費とシステム費が、仕事の量にかかわらず毎月出る(固定費)委託料は量に応じた従量のほか、月額固定や顧問報酬に連動する体系もある(量に連動する体系なら変動費に寄る)
人製の担い手を採り、育て、管理する。パートや在宅など担い手の幅は広げやすい製の担い手の採用と教育を事務所で抱えない。製のノウハウは所内に残りにくい
処理の方針事務所のやり方を細かく反映でき、急ぎの調整も所内で済む方針を委託先に伝え、合わせてもらう手間がかかる
顧問先の情報所内で完結する外部と共有するため、契約で扱いを決め、必要に応じて顧問先に説明する
管理の根拠使用人等に対する監督義務(税理士法第41条の2)個人情報保護法第25条の委託先の監督と、税理士の秘密を守る義務(第38条)を踏まえた契約
繁閑の波12月〜3月の負荷を所内で受け止める委託先が受け止めやすい。繁忙期の納期は事前に取り決める
仕組み(クラウド・AIなど)事務所が選び、導入し、更新し続ける委託先が投資し、更新する。その代わり委託先に頼ることになる
職員の育て方製で経験を積んだ職員が販へ移る道を、所内に作れる記帳を通じて会計を覚える道は、別に考える必要がある
製から販への情報所内のやり取りで渡せる納品物(仕訳の根拠、確認事項)で渡す形を決めておく

この表で、どちらの列が優れているということはありません。所内で分ける方法は「事務所のやり方を保ったまま、時間をかけて体制を作る」形、外部委託は「体制づくりの一部を外に任せて、早く販に人を回す」形です。

所内で分ける場合:良さと、事務所が抱え続けるもの

所内で分ける最大の良さは、事務所のやり方を細かく反映できることです。顧問先ごとの科目の使い方、資料の締め日、試算表を届ける日。こうした取り決めを、毎月のやり取りの中で調整できます。顧問先の情報も所内で完結します。製のチームで記帳や残高照合の経験を積んだ職員が、数年後に販の担当へ移る、という育て方を事務所の中に作れるのも、所内ならではです。

その代わり、製のチームを動かし続けるためのものを、事務所が抱えます。

  • 工程と手順。 資料の回収、入力、証憑の紐付け、残高照合、試算表の確認と工程を分け、顧問先ごとに処理の癖を書いたメモを用意する。顧問先が増えるたびに、メモも増えます
  • 担い手と確認者。 入力や整理を担う人を採り、教え、担い手が辞めたときにも工程が止まらないようにする。入力の結果を確かめる経験者の時間も、製の側に要ります
  • 仕組み。 クラウド会計、ストレージ、資料の読み取りや仕訳の起案に使うAIツールを選び、導入し、更新し続ける。ツールは入れて終わりではなく、顧問先の資料や取引に合わせて設定を直す人が要ります
  • 進み具合の見える化。 顧問先ごとに、どの工程まで終わったかを一覧で持つ。これがないと、遅れは締めの直前まで見えません

この4つを設計し、回し続ける人が所内にいるかどうか。所内で分ける方法が向くかどうかの、いちばん大きな分かれ目はここです。

外部委託で分担する場合:良さと、事務所に残る仕事

外部委託の良さは、上の4つの多くを委託先が担うことです。工程の設計、担い手の確保と教育、仕組みへの投資と更新を、委託先が引き受けます。事務所は製の体制づくりに時間をかけずに、販に人を回せます。繁忙期の作業量の波も、委託先が受け止めやすくなります。

一方で、外部委託にしても事務所に残る仕事があります。

1つ目は、処理の方針を伝えることです。顧問先ごとの癖が伝わらないまま資料だけが渡ると、科目や税区分が揺れ、事務所の確認で直すことになります。取引の多い取引先とその勘定科目・税区分、資料の来方と締め日、過去に顧問先と確認した論点を、顧問先ごとに1枚にまとめて渡します。

2つ目は、確認と説明です。納品された帳簿の試算表レベルの確認、税務判断、顧問先への説明は事務所に残ります。仕訳の根拠が納品物に添えられているかどうかで、この確認にかかる時間は大きく変わります。

3つ目は、顧問先の情報の扱いを決めることです。秘密保持と再委託、データの保管場所と削除、AIの学習への利用可否、出口の条件を契約で決めておきます。委託先と契約前に決める項目と、顧問先ごとの採算の計算方法は会計事務所が記帳業務を外注するという選択肢にまとめました。

難しさもあります。製のノウハウが所内に残りにくく、委託先に頼る部分が増えます。解約時にデータをどの形式で受け取れるかは、最初に確かめておきます。記帳を通じて会計を覚える道も、別に考える必要があります。

どちらが向いているか:判断のチェックリスト

次の6つの問いで、事務所の状態に近いほうを選んでみてください。所内に傾く答えが多ければ所内で分ける方法、外部委託に傾く答えが多ければ外部委託から考えるのが目安です。

問い所内で分ける方法に傾く答え外部委託に傾く答え
製の量は、専任のチームを置けるほどあるか顧問先が多く、製だけで数人分の仕事が毎月ある専任を置くほどではない。月による波が大きい
どれくらいの速さで顧問先を増やしたいか数年かけて体制を整えればよい今年から、新しいお客様の獲得に人を回したい
仕組みを整え、回し続けられる人が所内にいるか工程と手順を設計し、ツールを選んで更新し続ける人がいるその役割を担える人がいない、またはその人を販に回したい
事務所独自の処理や、特定の業種への偏りは大きいか独自の処理が多く、細かな調整が毎月ある定型的な取引が中心の顧問先が多い
製を、職員が経験を積む場にしたいか製で育てて販へ移す道を、所内に作りたい育成は、試算表の確認や面談の同席など販に近い仕事の中で行う
所長が自分の時間をどこに使いたいか製のチームの管理にも時間を使える販と事務所の経営に時間を寄せたい

答えが分かれることも多いはずです。その場合は、次の節のように組み合わせを考えます。

組み合わせる:工程・顧問先・始める時期で分ける

所内か外部委託かを、事務所全体で一つに決める必要はありません。分け方は大きく3つあります。

工程で分ける。 資料の整理と記帳は外部に出し、残高照合、試算表の確認、決算書の作成は所内のチームで担う。所内のチームは少人数でも回り、事務所のやり方は確認の工程で反映できます。

顧問先で分ける。 銀行やカードの明細がデータで取れ、定型的な取引が中心の顧問先は外部に、独自の処理が多い顧問先や、記帳の練習の場にしたい顧問先は所内に残します。

始める時期で分ける。 新しく受けた顧問先から外部と分担して始めると、既存の顧問先の担当や資料の流れを変えずに試せます。うまく回る型が見えてから、既存の顧問先に広げます。

どの分け方でも、製と販の間で渡す情報は先に決めておきます。製から販へは、売上の大きな変化や新しい借入、確認が必要な取引を、月次の締めのあとに一覧で。販から製へは、面談で聞いた設備投資や役員報酬の変更の予定を、面談の当日中に。所内で分けても外部と分担しても、この受け渡しがないと、記帳で気づいたことが面談に届かなくなります。

当社の会計事務所向け 4649経理代行は、外部委託で分担する形のひとつです。記帳代行・支払代行・経費チェック・固定資産管理・納品突合の5メニューから、1社・1メニューでも使え、顧問先との窓口は事務所のまま。申告書の作成や税務相談は引き受けません。料金は顧問先から受け取る報酬の一定割合を当社の料金として確定する粗利保証型で、割合と条件は業務内容により個別にご提案しています。仕訳一行ごとに根拠と証憑を添えて納品し、判断が必要な点は作業報告書で確認事項としてお伝えするので、その確認事項を、製から販へ渡す情報の一部として使えます。お預かりしたデータをAIの学習に使うことはありません。


所内か外部委託かを決める前に、手を付けることが2つあります。誰がどの業務に月何時間使っているかを書き出すことと、製と販の間で渡す情報の形を決めることです。前者がないと、どこから分けるかが決まりません。後者がないと、分けたあとで顧問先への説明が細くなります。体制を先に変えると、この2つはあとから整えることになり、顧問先への対応を続けながらの整え直しになります。

なお、本記事は事務所運営の一般論です。税理士法や個人情報保護法の個別の解釈、委託先との契約の組み方は、所属の税理士会や弁護士にご確認ください。

よくある質問

Q. 所内で製のチームを作ったあとでも、外部委託を組み合わせられますか?
組み合わせられます。所内のチームで残高照合や試算表の確認を担い、資料の整理と記帳だけを外部に出す、資料が電子で揃っている顧問先だけを外部に出す、といった分け方があります。所内で分けるときに作った顧問先ごとの処理メモは、そのまま委託先に渡す処理基準になるので、所内で分けた経験は外部委託の準備にもなります。どの工程・どの顧問先を出すかは、顧問先ごとの採算と資料の状態を見て決めてください。
Q. 外部委託すると、職員が記帳を通じて会計を覚える機会がなくなりませんか?
記帳を手で起こす機会は減ります。その代わり、納品された仕訳の根拠を読み、試算表を確認し、決算書を作る工程は事務所に残ります。根拠が添えられた仕訳を確認することは、なぜその科目になるのかを学ぶ場にもなります。記帳から覚える道を残したい場合は、一部の顧問先の記帳を所内に残し、新しく入った職員の練習の場にする方法もあります。
Q. 職員が数名の小さな事務所でも、所内で分けられますか?
製だけを担う専任を置くのは難しい場合が多いです。製の量が少ないと、専任の手が空く月が出るからです。小さな事務所では、所内で人を分けるより、工程で分けるほうが現実的です。たとえば資料の整理と記帳を外部に出し、所長と職員は試算表の確認と顧問先との面談に回る形です。所内で分けるか外部委託かを決める前に、誰がどの業務に月何時間使っているかを書き出すと、どこから分けるかが見えます。