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固定資産・減価償却

一括償却資産と少額減価償却資産の違い:10万・20万・40万円の判定

執筆: 4649編集部

一括償却資産と少額減価償却資産の特例は、どちらも「取得価額の小さい固定資産を、耐用年数より早く費用にする」制度ですが、別物です。一括償却資産は取得価額20万円未満の資産を3年で均等に損金算入する制度で、青色・白色を問わずすべての法人が使え、固定資産税(償却資産)の申告対象外になります。少額減価償却資産の特例は、青色申告書を提出する中小企業者等だけが、取得価額40万円未満(2026年3月31日以前に取得した資産は30万円未満)の資産を年間合計300万円まで全額その期の損金にできる制度で、こちらは償却資産税の申告対象に残ります。

違いを把握したうえで迷うのは、15万円のパソコンや35万円の複合機を目の前にしたとき、どの処理を選ぶかです。この記事では、2つの制度を比較表で整理し、取得価額の帯ごとに取れる選択肢、仕訳例、除却時の落とし穴、台帳での管理方法を国税庁の一次ソースに沿って解説します。固定資産業務全体の流れは固定資産管理の完全ガイド、通常の減価償却の計算は減価償却の計算方法に分けてあります。

一括償却資産と少額減価償却資産の特例の違い:7つの観点で比較する

先に全体を一覧にします。根拠は国税庁タックスアンサーのNo.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示とNo.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例です。

観点一括償却資産少額減価償却資産の特例
根拠法人税法施行令133条の2租税特別措置法67条の5
対象の取得価額20万円未満10万円以上40万円未満(2026年3月31日以前の取得は30万円未満)
使える法人すべての法人(青色・白色を問わない)青色申告書を提出する中小企業者等
損金にする時期3年間で均等(取得価額の合計額 × 当期の月数 ÷ 36)事業の用に供した事業年度に全額
年間の上限なし取得価額の合計で300万円(事業年度が1年未満なら月割)
固定資産税(償却資産)申告対象外申告対象
申告書の明細別表十六(八)別表十六(七)と適用額明細書

名前が似ているので混同されやすい用語を、ここで切り分けておきます。「少額の減価償却資産」は法人税法施行令133条の制度で、取得価額10万円未満または使用可能期間1年未満の資産を事業供用時に全額損金にするもの。すべての法人が使えます。「少額減価償却資産の特例」は租税特別措置法の中小企業者等向けの制度で、10万円以上の資産が対象です。会計ソフトの区分名や社内の呼び方で「少額」が両方を指していることがあり、台帳の区分列では「10万円未満・費用処理」と「中小企業者等の特例」を別の値にしておく必要があります。

取得価額の帯で選択肢が決まる:10万円・20万円・40万円の判定表

判定の起点は取得価額です。帯ごとに取れる処理と、それぞれの償却資産申告の扱いを一覧にします。

取得価額取れる処理償却資産の申告
10万円未満全額を事業供用時の損金に(消耗品費など)。一括償却資産に含めることもできる損金処理なら対象外
10万円以上20万円未満①通常の減価償却 ②一括償却資産 ③少額減価償却資産の特例(青色の中小企業者等)①対象 ②対象外 ③対象
20万円以上40万円未満①通常の減価償却 ③少額減価償却資産の特例(青色の中小企業者等)①対象 ③対象
40万円以上通常の減価償却対象

※表の40万円の基準は、2026年(令和8年)4月1日以後に取得して事業の用に供した資産に適用されます。2026年3月31日以前に取得した資産は30万円未満が特例の対象で、30万円以上の資産は通常の減価償却です。

償却資産の扱いは地方税法341条4号と同法施行令49条が根拠で、取得価額10万円未満で一時に損金算入した資産と、20万円未満で3年間一括償却した資産は申告対象から除かれます。一方、中小企業者等の特例で全額損金算入した資産は、会計上は資産に残らないのに申告対象です(横浜市 租税特別措置法の特例(即時償却)を受ける減価償却資産の固定資産税(償却資産)における取扱い、名古屋市 固定資産税(償却資産)と法人税・所得税(国税)との取扱いの比較)。同じ15万円のパソコンでも、一括償却資産を選べば償却資産税がかからず、特例を選べばかかる。損金にする時期だけでなく、この違いが選択の分かれ目になります。

表に当てはめる前に、取得価額の見方で3つ確認することがあります。

判定の単位は「通常1単位として取引される単位」です。 応接セットはテーブルと椅子で1組、カーテンは1部屋分の合計で判定します。機械及び装置は1台または1基ごと、工具器具備品は1個・1組・1そろいごとが基準です(法人税基本通達 7-1-11)。請求書の明細が1行ずつ10万円を切っていても、セットでないと機能しないものは合算します。

税込か税抜かは、自社の経理方式で決まります。 税抜経理方式なら税抜の金額、税込経理方式なら税込の金額で判定します。税抜98,000円(税込107,800円)のパソコンは、税抜経理の法人なら10万円未満、税込経理の法人なら10万円以上です。免税事業者は税込経理方式しか採れないので税込で判定します(No.5403 の関連 Q&A)。

特例の金額基準は、事業年度ではなく資産の取得日で切り替わります。 令和8年度税制改正で特例の取得価額基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、2026年(令和8年)4月1日以後に取得して事業の用に供する資産から適用されます(中小企業庁 少額減価償却資産の特例、財務省 令和8年度税制改正の大綱)。12月決算の会社なら、2026年1〜3月に取得した35万円の複合機は特例の対象外(通常償却)、4月以後に取得したものは対象です。2026年中に取得した30万円以上40万円未満の資産は、取得日を台帳で確認してから区分を決めてください。

一括償却資産の仕組み:3年均等・月割なし・除却しても3年続く

一括償却資産は、取得価額20万円未満の減価償却資産について、事業年度ごとにその全部または一部をまとめ、取得価額の合計額(一括償却対象額)を3年間で損金算入する制度です。損金算入限度額は一括償却対象額に当期の月数を掛けて36で割った金額なので、12か月の事業年度なら毎年3分の1。事業の用に供した日からの月割はしません。 3月決算の会社が2027年3月に取得した資産でも、2027年3月期に3分の1を損金にできます。

対象から外れるのは、2022年(令和4年)4月1日以後に取得して貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供した資産です。また、適用を受けるには事業供用年度の確定申告書に一括償却対象額を記載した別表十六(八)を添付し、計算の明細を保存しておく必要があります(No.5403、法人税法施行令133条の2)。

見落とされやすいのが、除却したときの扱いです。一括償却資産は個々の資産ではなく「事業年度ごとの合計額」を償却しているので、3年の途中で一部を廃棄・売却しても、その事業年度に損金にできるのは均等償却の限度額までです。国税庁の質疑応答事例は、15万円のパソコン10台(合計150万円)を一括償却資産とし、翌年度に3台を除却して会計上30万円の除却損を計上したケースについて、損金算入できるのは150万円の3分の1にあたる50万円が限度で、除却損相当額の損金算入は認められないとしています(一括償却資産を除却した場合の取扱い、法人税基本通達 7-1-13)。会計上で除却損を立てると申告調整が発生するので、一括償却資産は廃棄しても3年の償却計算をそのまま続けるのが実務の基本です。台帳では「除却済み・償却継続中」とわかる状態で3年目まで残します。

少額減価償却資産の特例の仕組み:青色の中小企業者等が40万円未満を全額損金にする

少額減価償却資産の特例は、青色申告書を提出する中小企業者等が、取得価額40万円未満(2026年3月31日以前の取得は30万円未満)の減価償却資産を2029年(令和11年)3月31日までに取得して事業の用に供した場合に、その取得価額の全額を事業供用年度の損金にできる制度です。令和8年度改正で適用期限が3年延長され、対象法人から常時使用する従業員数が400人を超える法人が除外されました(No.5408、国税庁 令和8年度 法人税関係法令の改正の概要「主な中小企業税制の見直し」)。

適用するときに経理が確認する要件は次のとおりです。

  • 青色申告書を提出する中小企業者等であること。資本金または出資金が1億円以下の法人など一定の法人のうち、常時使用する従業員数が400人以下のもので、適用除外事業者に当たらないこと。要件の詳細は No.5408 を参照
  • 取得価額が10万円以上40万円未満(2026年3月31日以前の取得は30万円未満)であること。10万円未満の資産は施行令133条で全額損金になるので特例の対象外
  • 事業供用年度に取得価額の全額を損金経理していること。資産計上したまま申告書だけで減算することはできない
  • 確定申告書に別表十六(七)「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書」と適用額明細書を添付すること
  • 一括償却資産の損金算入の規定を受けた資産ではないこと。貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供した資産でないこと
  • 事業年度の合計で300万円まで。事業年度が1年に満たない場合は300万円を12で割って月数を掛けた金額が限度

300万円は「達するまでの資産」が対象です。15万円のパソコンを25台買えば375万円で、20台分(300万円)までが特例、残り5台は一括償却資産か通常償却に回します。どの資産を枠に入れるかは法人が選べるので、台帳に取得日順の累計額の列を持っておくと、期末に組み替えずに済みます。

なお、この特例は損金経理が要件なので、会計上の利益もその分減ります。利益水準や金融機関への説明を考えて特例を使わない判断をする会社もあり、どちらが自社に合うかは税務と経営の両面の判断です。経理が勝手に決めるのではなく、顧問税理士と会社の方針として決め、経理はその方針に沿って機械的に区分する体制にしてください。

仕訳例:同じ15万円のパソコン5台を3通りで処理する

取得価額15万円(税抜経理)のパソコン5台、合計75万円を期首に取得した場合の仕訳を、3つの処理で並べます。パソコンの法定耐用年数は4年です(耐用年数の調べ方)。

①通常の減価償却(定額法を選定している場合)

時点借方貸方
取得時工具器具備品 750,000未払金 750,000
決算時減価償却費 187,500工具器具備品(または減価償却累計額) 187,500

定額法4年の償却率は0.250なので年187,500円、月次では15,625円ずつ計上します。償却資産の申告対象で、別表は十六(一)です。定率法の場合の計算と月割は減価償却の計算方法を参照してください。

②一括償却資産

時点借方貸方
取得時一括償却資産 750,000未払金 750,000
決算時(3年間同額)減価償却費 250,000一括償却資産 250,000

科目は「一括償却資産」を独立させるのが台帳との対応を取りやすく、工具器具備品に混ぜると償却資産申告の抽出時に区分が必要になります。月次で乗せるなら年250,000円を12で割った20,833円(端数は期末で調整)。償却資産の申告対象外で、別表は十六(八)です。全額を取得時の費用にして申告書で加算・減算する方法もありますが、申告調整の設計は顧問税理士と決める領域です。

③少額減価償却資産の特例

時点借方貸方
取得時工具器具備品 750,000未払金 750,000
同期の決算時減価償却費 750,000工具器具備品 750,000

損金経理が要件なので、取得した事業年度の決算で全額を費用にします。取得時に直接「消耗品費」で費用処理しても損金経理には当たりますが、別表十六(七)に資産ごとの明細を書くため、台帳に1行ずつ残すことは省けません。帳簿価額はゼロになっても償却資産の申告対象には残るので、台帳の償却資産区分は「対象」のままにします。

3通りの違いを、損益と償却資産申告の面から並べるとこうなります。

処理初年度の損金2年目以降償却資産の申告
①通常償却(定額法)187,500円残り3年で償却対象
②一括償却資産250,000円2年目・3年目に250,000円ずつ対象外
③特例750,000円なし対象

どれを選ぶかは会社の方針として決め、経理は機械的に区分する

請求書が来るたびに担当者が選んでいると、同じ15万円のパソコンがある月は一括償却資産、別の月は工具器具備品になります。判断軸を3つに絞り、帯ごとの原則を方針として文書に残してください。

1. 特例が使えるか。 白色申告の法人、資本金1億円超の法人、従業員400人超の法人は特例を使えないので、選択肢は通常償却と一括償却資産だけです。判定は法人単位で年1回確認すれば足ります。

2. 償却資産税への影響。 償却資産の固定資産税は、同一市町村内の課税標準額の合計が免税点の150万円未満(令和9年度分以後は180万円未満)なら課税されず、税率は標準で1.4%です(総務省 固定資産税の概要)。すでに免税点を超えている会社では、一括償却資産を選ぶと20万円未満の資産がすべて申告対象から外れます。逆に、資産がほとんどなく免税点に届かない会社では、特例を選んでも償却資産税は変わりません。

3. 損益と事務負担。 特例は損金経理が要件なので会計上の利益も減ります。一括償却資産は3年間、事業年度ごとの合計額を管理し続ける必要があり、除却しても償却が続きます。特例は取得年度で終わりますが、償却資産申告の対象として台帳に残り続けます。

この3つを踏まえた方針の例は「10万円以上20万円未満は一括償却資産を原則とする。20万円以上40万円未満は特例を原則とし、300万円に達した後は通常償却」のような形です。これはあくまで方針の書き方の例で、自社に合う組み合わせは税務判断を含むため顧問税理士と決めてください。方針が決まれば、経理の仕事は請求書の金額と取得日を表に当てて区分を付けるだけになります。

台帳で3つの区分を追う:列の設計とチェックリスト

3つの処理を1つの台帳で管理するには、次の列があれば足ります。既存の台帳に列を足す形で使ってください。台帳全体の列設計は固定資産台帳の作り方にあります。

列入れる値使う場面
取得日・事業供用日日付30万円・40万円基準の切り替え判定、一括償却の事業年度の特定
取得価額と経理方式金額、税込/税抜の別10万円・20万円・40万円の判定
判定単位1台/1組/1そろい、セット構成の内訳合算して判定した根拠
処理区分費用処理(10万円未満)/通常償却/一括償却資産/中小企業者等の特例別表の振り分け、償却資産申告の抽出
償却資産申告対象/対象外1月の償却資産申告
特例の累計額事業年度内の取得日順の累計300万円の枠の残り
除却状況除却日、一括償却資産は「償却継続中」一括償却資産の3年目までの管理

月次と期末の確認項目をまとめます。

  • 10万円以上の請求書は、支払処理の前に取得価額の帯を判定し、処理区分を付けたか
  • 判定単位をセットで見たか。明細の1行ごとではなく、1組・1そろいで合算したか
  • 税込経理の会社で、税抜金額を見て10万円未満・20万円未満と判定していないか
  • 2026年中に取得した30万円以上40万円未満の資産は、取得日が4月1日以後かを確認したか
  • 特例を使った資産の累計が300万円に近づいていないか。超えた資産は一括償却資産か通常償却に回したか
  • 一括償却資産は、事業年度ごとの合計額と当期の損金算入額が別表十六(八)の金額と一致するか
  • 一括償却資産を除却した資産に、除却損を計上していないか(計上したなら申告調整の要否を税理士に確認)
  • 特例を使って帳簿価額ゼロになった資産が、償却資産申告の対象に残っているか

請求書の受領時に帯を判定して区分を付け、3年にわたる一括償却資産と特例の累計を台帳で追い続ける作業は、件数が増えると月次の締めの中で後回しになりがちです。4649経理代行の固定資産管理は、請求書や既存の台帳をいつものストレージで共有いただき、登録内容や耐用年数・償却方法をAIが起案して4649の担当者が確認したうえで台帳に反映し、減価償却費を計上して根拠資料とあわせて納品します。台帳が長年整備されていない状態からの現状整理にも対応します。どの区分を原則にするかの方針決定や申告書の作成は顧問税理士の領域のままなので、事務所との分担を確認したうえでご相談ください。


一括償却資産と少額減価償却資産の特例の違いは、対象金額(20万円未満か40万円未満か)、使える法人(全法人か青色の中小企業者等か)、損金にする時期(3年均等か即時か)、償却資産税(対象外か対象か)の4点に集約されます。帯ごとの原則を方針として決め、台帳の区分列で追えば、請求書が来るたびに迷う判定ではなくなります。

なお、この記事は一般的な制度と実務の解説です。自社が中小企業者等に当たるかの判定、どの処理を原則とするかの方針、除却損を計上した場合の申告調整といった個別の判断は税務判断にあたるため、顧問税理士にご相談ください。

よくある質問

Q. 同じ資産に一括償却資産と少額減価償却資産の特例を両方使えますか?
同じ資産に両方を重ねて使うことはできません。少額減価償却資産の特例の対象から、一括償却資産の損金算入の規定を受けた資産は除かれています。ただし資産ごとに選べるので、同じ事業年度に取得した15万円のパソコンのうち、一部を一括償却資産、残りを特例の対象にすることは可能です。実務では請求書ごとに判断がぶれないよう、金額帯ごとにどの処理を原則にするかを会社の方針として決め、特例の年間合計300万円に達した後の資産は一括償却資産に回す、のように順序まで決めておくと迷いません。方針そのものの決定は税務判断を含むため、顧問税理士と相談して決めてください。
Q. 一括償却資産にしたパソコンを2年目に廃棄しました。残りの未償却額をその期に全額損金にできますか?
できません。一括償却資産は個々の資産ではなく、事業年度ごとの取得価額の合計額を3年で均等に損金算入する仕組みなので、途中で一部を除却・滅失しても、その事業年度に損金にできる金額は均等償却の限度額までです。国税庁の質疑応答事例では、15万円のパソコン10台を一括償却資産とし、翌年度に3台を除却して30万円の除却損を計上したケースについて、損金算入できるのは150万円の3分の1である50万円までで、除却損相当額を別途損金にすることはできないと示されています。会計上で除却損を計上した場合は申告書で調整が必要になるため、処理は顧問税理士に確認してください。
Q. 少額減価償却資産の特例の年間合計300万円を超えたら、超えた資産はどうなりますか?
300万円に達するまでの資産が特例の対象で、それを超える資産は特例を使えません。超えた資産のうち取得価額20万円未満のものは一括償却資産を選べますし、20万円以上のものは耐用年数に応じて通常の減価償却をします。どの資産を300万円の枠に入れるかは法人が選べるので、台帳に取得日順の累計額の列を持ち、枠が埋まる時点を月次で把握しておくと、期末にまとめて組み替える手間がなくなります。なお、事業年度が1年に満たない場合の限度額は300万円を12で割って月数を掛けた金額です。