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経費精算

経費精算の効率化ガイド:申請から仕訳・支払までの流れと改善手順

執筆: 4649編集部

経費精算の効率化で最初に手を付けるべきなのは、システムの選定ではありません。申請から支払までの間で、申請書が何回往復し、どこで何日止まっているかを数えることです。差し戻しが月に30件ある会社は、その30件ぶんの入力・確認・修正・再承認を毎月やり直しています。この往復を減らさない限り、入力画面がスマートフォンになっても経理の作業時間は変わりません。

この記事では、経費精算を申請・承認・チェック・仕訳・支払・保存の6工程に分け、工程ごとに何が時間を食っているか、どの指標で測るか、どう直すかを順に整理します。制度上「集めなくてよい領収書」を集めている無駄、申請区分から仕訳を機械的に起こす対応表、そして30日で進める改善手順まで、そのまま使える形で書きました。税務上の個別判断は顧問税理士の領域なので、本記事は会計実務と業務設計の範囲で書きます。

経費精算の効率化はシステム選定から始めない:6工程に分けて往復と滞留を測る

経費精算の非効率は、1件あたりの入力時間ではなく、同じ申請が工程の間を往復する回数と、次の担当者の机で止まっている日数に隠れています。入力に3分かかる申請が1回で通れば3分です。差し戻されて申請者が修正し、承認者がもう一度見て、経理が再チェックすれば、3分の申請に3人が合計30分使うことになります。

この構造を見ずにシステムを入れると、差し戻しの往復がそのまま画面上で再現されます。逆に、往復の原因を先に潰しておけば、紙の運用のままでも作業時間は目に見えて減ります。効率化の順序は、測る → 往復を減らす → 工程を自動化するです。システムは3番目に効く道具で、1番目と2番目を代わりにやってくれるものではありません。

経費精算の流れ:申請から仕訳・支払までの6工程と各工程の非効率

経費精算の工程を担い手ごとに切ると、次の6つに分かれます。会社によっては承認とチェックが同じ人、仕訳と支払が同じ人ということもありますが、担い手が同じでも作業の性質は違うので、分けて見てください。

工程主な担い手起きている非効率測る指標
1. 申請従業員領収書を月末までため込んでまとめて入力する。目的・経路・参加者の記載が抜ける支出日から申請日までの日数
2. 承認所属長内容を見ずに承認する。逆に、出張や休暇で承認者の手元に数日止まる申請日から承認日までの日数
3. チェック経理領収書と申請の金額・日付を1件ずつ目視で突合し、規程に合うかと科目を毎回考える差し戻し率、1件あたりの処理時間
4. 仕訳経理承認済みの申請を会計ソフトに手入力し、科目と税区分を都度判断する手入力の件数、締め日から仕訳完了までの日数
5. 支払経理・財務振込データを手で作る。都度払いで振込の回数と手数料が増える月あたりの振込回数、承認から入金までの日数
6. 保存経理紙の原本とデータの両方を残して二重管理になる。後から探せない保存形式ごとの件数、探すのにかかる時間

6工程のうち、従業員と所属長が関わるのは1と2だけです。それでも経費精算の効率化が経理だけの努力で終わらないのは、3以降で起きている作業の多くが、1と2で情報が足りないことの後始末だからです。経理が領収書を見て「参加者は何人か」「この移動は定期区間内か」を申請者に聞き返す時間は、工程3の処理時間として計上されますが、原因は工程1にあります。

現状診断テンプレート:工程別に数える5つの指標

改善に着手する前に、1か月分の申請データで次の5つを数えてください。経費精算システムがある会社はエクスポートで取れますし、紙やスプレッドシートの会社でも、申請日・承認日・支払日と差し戻しの有無を1行ずつ記録すれば1か月で揃います。

#指標数え方読み方
1差し戻し率差し戻された申請件数 ÷ 全申請件数工程1と工程3の設計の問題。理由別に集計し、上位3つの理由を潰す
2申請リードタイム支出日から申請日までの日数の中央値長いほど月末に申請が集中し、締め後の処理が詰まる
3承認滞留日数申請日から承認日までの日数の中央値と最大値最大値が10日を超えるなら代理承認と承認期限の規定が機能していない
4経理の1件あたり処理時間経理がチェックと仕訳に使った時間 ÷ 件数突合と科目判定を手でやっている度合い。申請区分の整備で下がる
5精算完了までの日数支出日から従業員への入金日までの日数従業員から見た経費精算の体感。長いと立替の不満と催促の問い合わせが増える

数字そのものより、理由別の内訳が改善の入口です。差し戻し率が8%だったとき、その理由が「領収書の添付漏れ」「参加者の記載なし」「定期区間を含む経路」の3つで7割を占めるなら、打つ手はフォームの必須項目と経路検索の導入であって、システム全体の入れ替えではありません。

差し戻しの理由を記録していない会社は、今月からでよいので記録を始めてください。差し戻しのコメント欄に自由記述で書くのではなく、「添付漏れ」「記載不足」「規程超過」「科目相違」「二重申請」「期限超過」の6区分から選ぶ形にすると、翌月には集計できます。

工程1〜2:申請と承認の効率化は「入力項目を減らす」ではなく「判定に要る項目だけ必須にする」

申請フォームの改善というと入力項目を減らす方向に考えがちですが、差し戻しを減らす方向は逆です。チェック工程で判定に使う情報が、申請時点で揃っている状態を作ります。項目は増えても、聞き返しの往復が消えるので全体の時間は減ります。

申請区分を先に設計する

申請区分は、科目・税区分・証憑の要否・帳簿への記載を決める起点です。「交通費」「飲食費」「その他」の3区分では、経理が中身を見て判定し直すことになります。最低限、次の区分に分けてください。

得意先等との飲食は、参加者の氏名・所属と人数の入力欄を必須にします。これは経理の都合ではなく、1人当たり1万円以下(令和6年4月1日以後に支出する飲食費。それ以前は5,000円以下)の飲食費を交際費等から除く取り扱いを使うのに、飲食の年月日、参加した得意先等の氏名や名称と関係、参加人数、金額、飲食店の名称・所在地などを記載した書類の保存が求められるからです(No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算)。申請フォームに人数の欄がなければ、経理は1人当たりの金額を計算できず、毎回聞き返すことになります。得意先等との会食・社内の者のみの飲食・会議に伴う飲食の判定順序は、経費精算規程の作り方の「交際費と会議費:1人当たり1万円が分岐点」で整理しています。

公共交通機関の運賃は、経路検索と連携して出発地・到着地から金額を自動で入れられる仕組みがあると、金額の入力ミスと定期区間の控除漏れが一度に減ります。通勤定期の区間は社員マスタに持たせ、定期区間と重なる経路は申請できないようにするか、自動で差し引く設定にします。

承認は金額帯で2段階まで、代理承認と承認期限を規程に書く

承認ルートは、1件あたりの金額で切って2段階までにします。たとえば1件5万円以下は所属長の承認のみ、5万円超は所属長に加えて経理部長の承認、という形です。3段階以上の承認は、途中の承認者が内容を見なくなるので、承認の数が増えても統制は強くなりません。

承認滞留の最大値が大きい会社は、承認者不在時の代理承認と、「申請から◯営業日以内に承認または差し戻しを行う」という承認期限が規程にないことがほとんどです。この2点を書くだけで最大値は縮みます。代理承認の条文は経費精算規程の作り方の第6条(承認)がそのまま使えます。承認期限はひな形に条文がないので、第6条に「所属長は申請から◯営業日以内に承認または差し戻しを行う」を自社で追記してください(同記事の第4条は申請者側の申請期限で、承認期限ではありません)。

承認者の仕事は、金額の正しさを見ることではありません。金額と領収書の突合は工程3で経理がやります。承認者が見るのは、その支出が業務上必要だったかという、現場の長にしか判断できない点に絞ります。この分担を承認者に伝えておくと、承認の滞留は減り、承認の質は上がります。

工程3:チェックの効率化は「集めなくてよい証憑を集めない」ことから

チェック工程の時間は、件数 × 1件あたりの確認項目数で決まります。件数を減らす手段が「制度上、証憑の保存が要らない取引を見極めること」で、確認項目を減らす手段が「規程を判定できる形に直すこと」です。

帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる取引

消費税の仕入税額控除は、原則として帳簿と請求書等の両方の保存が要件ですが、一定の取引は帳簿への一定事項の記載だけで控除が認められます。経費精算に関係するのは次の3つです。

出張旅費等については、その旅行に通常必要であると認められる部分であれば、帳簿のみの保存で控除が認められます(No.6459 出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い)。これらの特例を使う場合、帳簿には通常の記載事項に加えて特例の対象である旨の記載が必要で、取引によっては相手方の住所も要ります(国税庁インボイスQ&A「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項」)。

つまり、電車代の領収書を全員に取らせて経理が1枚ずつ確認している会社は、制度が求めていない作業をしています。申請区分が「公共交通機関(1回の取引が税込3万円未満)」なら領収書の添付を不要にし、帳簿には申請区分から機械的に特例対象の旨を記載する。これだけで、件数ベースで最も多い交通費の申請が、証憑チェックの対象から外れます。逆に、4名分の新幹線をまとめて購入したように1回の取引が税込3万円以上になる申請は特例の対象外なので、申請区分を分けてインボイスの添付を必須にしておきます。

少額特例:税込1万円未満の取引

基準期間における課税売上高が1億円以下、または特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間、税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくても一定事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除ができます(少額特例の概要)。1万円未満かどうかは一回の取引単位の税込金額で判定します(国税庁インボイスQ&A「一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置における1万円未満の判定単位」)。

自社がこの特例の対象なら、1万円未満の申請については「登録番号があるか」「税率ごとの区分があるか」というインボイス要件の確認を省けます。領収書そのものは法人税の帳簿書類として保存しますが、確認項目が1つ減ります。自社が対象かどうかは課税売上高の判定を伴うので、顧問税理士に確認してください。

従業員宛ての領収書:宛名がなければそのまま、従業員名が入っていれば従業員名簿とセットで保存する

従業員が立て替えた消耗品や飲食の領収書は、コンビニや飲食店など不特定多数を相手にする事業から交付される適格簡易請求書であることが多く、簡易インボイスには宛名の記載が不要です。ただし、会社が仕入税額控除に使えるかどうかは、宛名が空欄か、従業員名が入っているかで分かれます(国税庁インボイスQ&A「従業員が立替払をした際に受領した適格簡易請求書での仕入税額控除」)。

従業員名簿等の保存で立替金精算書を省けるのは、簡易インボイスの場合です。宛名の記載が要る適格請求書を従業員名で受け取ったときは、会社名での発行を求めるか、立替金精算書を添えるルールにします。

運用に落とすと、「宛名が従業員名だから差し戻す」というルールは簡易インボイスについては不要ですが、それは従業員名簿を整備して保存していることが前提です。名簿がなければ、差し戻さない代わりに立替金精算書を1件ずつ集めることになり、申請者と経理の手間がかえって増えます。経費精算に着手する前に、人事側が持っている従業員名簿を経理でも保存対象に含めているかを確認してください。領収書側の判定手順はインボイス制度の領収書要件にまとめています。

残った申請は全件チェックする:確認項目を固定する

証憑チェックの対象を絞ったうえで、残った申請は全件見ます。サンプルチェックは、二重申請や規程超過のように件数が少ないが1件の影響が大きい誤りを取り逃がします。全件を回せる前提は、確認項目が固定されていることです。

確認項目見るもの差し戻しの判定
金額の一致申請金額と領収書の合計1円でも違えば差し戻し
日付の整合支出日と領収書の日付、申請期限期限超過は理由書の有無を確認
申請区分と内容の一致区分と領収書の但し書き・店名飲食なのに「消耗品」なら区分を直して再申請
規程の上限区分ごとの上限金額、事前承認の有無超過は事前承認の記録がなければ差し戻し
二重申請同一の日付・金額・店名の申請が過去にないか同一人物の再申請だけでなく、同席者が同じ領収書を申請していないかも見る
インボイス要件登録番号、税率ごとの区分(特例対象を除く)不足は経過措置の扱いを含めて経理が判定

二重申請の検出で見落とされやすいのは、同じ会食を2人が別々に申請するパターンです。幹事が領収書の原本で申請し、同席者が撮影した画像で申請すると、同一人物の重複を見るだけでは拾えません。日付・店名・金額の3点で申請者をまたいで突合します。仕訳側で二重計上が起きる6つのパターンは仕訳の二重計上を防ぐ方法で整理しています。

工程4:仕訳の効率化は申請区分から科目・税区分を機械的に決める対応表で

承認済みの申請を会計ソフトに手入力し、科目と税区分を毎回考えている状態が、経理の処理時間を最も食います。ここは申請区分 → 勘定科目 → 消費税の扱い → 帳簿への記載の対応表を1枚作り、申請区分が決まれば仕訳が決まる状態にします。以下は本則課税の会社を想定した例です。

申請区分勘定科目消費税の扱い帳簿・証憑の扱い
公共交通機関(1回の取引が税込3万円未満)旅費交通費課税仕入れ(帳簿のみ保存の特例)帳簿に特例対象の旨を記載。領収書不要
公共交通機関(1回の取引が税込3万円以上)旅費交通費課税仕入れインボイスを保存(特例の対象外)
タクシー旅費交通費課税仕入れ領収書(簡易インボイス)を保存
出張の宿泊費・日当(別表どおり)旅費交通費課税仕入れ(出張旅費等特例)帳簿に特例対象の旨を記載
得意先等との飲食交際費または会議費(判定は税務基準に従う)課税仕入れ参加者・人数を記載した書類と領収書を保存
社内の者のみの飲食交際費(福利厚生費に当たる場合を除く)課税仕入れ領収書を保存
会議に伴う茶菓・弁当会議費課税仕入れ領収書と会議の記録を保存
消耗品・備品消耗品費(取得価額により固定資産)課税仕入れ領収書を保存

科目の割り当ては会社の裁量ですが、交際費等に当たるかどうかなど税額に影響する区分は税務基準に従います。得意先等との飲食が交際費等から除かれる条件、社内飲食が福利厚生費になる限定的な場合は勘定科目の選び方に判定基準をまとめました。対応表は顧問税理士に一度見てもらい、以後は経理がその表どおりに起票します。

仕訳例:立替精算・法人カード・仮払

経費精算で起きる仕訳は3型に収まります。承認済みの申請は、精算の入金を待たずに費用と負債を計上してください。締め日時点で承認済みの経費を未払金に乗せておかないと、翌月に入金した月の費用になり、期ずれが起きます。

立替精算(承認時に費用計上、翌月に精算)

日付借方貸方摘要
承認日(締め日)旅費交通費 12,400未払金 12,400従業員A 10月分経費精算
精算日未払金 12,400普通預金 12,400従業員A 10月分経費精算 振込

法人カード利用(利用時に費用計上、引落日に消し込み)

日付借方貸方摘要
利用日消耗品費 5,500未払金 5,500法人カード 文具購入
引落日未払金 5,500普通預金 5,500法人カード 10月利用分引落

仮払(出張前に概算を渡し、帰着後に精算)

日付借方貸方摘要
出張前仮払金 50,000普通預金 50,000従業員B 出張仮払
精算日旅費交通費 46,800 / 現金 3,200仮払金 50,000従業員B 出張精算(残金返金)

仮払金が月をまたいで残っている件数は、月次で数えてください。精算されない仮払金は、出張の実費が確定していないことを意味し、月次の費用が過少になります。立替金と仮払金の使い分けは立替金と仮払金の違いで整理しています。

月次決算との接続:経費精算の締めが月次の確定日を決める

経費精算の締め日が翌月5営業日なら、その月の費用が確定するのはそれ以降です。月次決算を早めたい会社は、まず経費精算の締めを前に動かすのが効きます。申請リードタイムの中央値が10日を超えている会社は、締め日を前に動かすだけでは申請漏れが増えるので、申請を「支出から3営業日以内」のように日次に近づける規程と、スマートフォンからその場で申請できる手段を先に用意します。月次全体の早期化手順は月次決算を早期化する方法、締めから報告までの全体像は月次決算 完全ガイドを参照してください。

工程5:支払の効率化は精算サイクルの固定と立替そのものの削減

支払工程で時間を使っているのは、振込データを手で作る作業と、都度払いによる振込回数の増加です。打ち手は2つで、精算の回数を減らすことと、立替を減らすことです。

精算は月1回に固定します。承認済み申請を締め日で集計し、従業員ごとの振込データを一括で作る。給与と同じ日に振り込む会社も多く、その場合は給与明細上で経費精算分を区分して表示します。経費精算の精算額は給与ではないので、明細を分けておかないと従業員側で手取りの計算が合わなくなり、問い合わせが増えます。

立替そのものを減らす手段が法人カードです。従業員が立て替えて後から精算する流れを、会社が直接支払う流れに置き換えれば、工程1の申請は「カード利用明細に目的と区分を付ける」作業になり、工程5の従業員への振込は消えます。カード会社からの利用明細データを経費精算システムや会計ソフトに取り込める環境なら、金額と日付の入力も不要になります。導入時に決めておくのは、カードを持たせる範囲(役職・部門)、1枚あたりの利用上限、私的利用が判明したときの処理です。

振込データの作成そのものを外部に出す場合、支払の最終確認・承認・実行は会社側に残します。お金を動かす判断と実行まで外に出すと統制が崩れるので、外部に出せるのは「データを作る」までです。経理業務のどこまでを外に出せるかの線引きは経理代行はどこまで丸投げできるかで整理しています。

工程6:保存の効率化は「電子取引はデータ保存が義務、スキャナ保存は任意」の区別から

保存工程で二重管理が起きるのは、電子帳簿保存法の3区分のうち何が義務で何が任意かを区別せずに、全部を紙にもデータにも残しているからです。

メールやWebサイトからダウンロードした領収書は電子取引に該当し、データのまま保存する必要があります(電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】)。これは義務なので、印刷した紙だけを残してデータを消す運用は認められません。一方、紙で受け取った領収書を撮影してデータ化するスキャナ保存は任意の制度で、紙のまま保存しておけば法律上は問題ありません(電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】)。

経費精算でスキャナ保存に踏み込むなら、最初の関門は入力期間です。領収書などの重要書類は、業務処理サイクル方式で最長2か月とおおむね7営業日以内にスキャンして保存まで終える必要があります。月次の締めが翌月末近くまでかかっている会社がここに手を出すと、締め作業とスキャンの期限が同じ週に重なります。申請リードタイムが短くなり、締めが安定してから着手する順序が現実的です。要件を満たせているかの確認が取れるまでは、紙の原本は捨てずに経理で保管します。要件の切り分けと猶予措置の条件は電子帳簿保存法の対応にまとめています。

申請フォーム側では、領収書の受領形式を「紙」「PDF・画像で受領」の2択で申請者に選ばせてください。経理はこの区分で保存先を機械的に振り分けられます。

効率化の手段比較:システム・法人カード・外部チェック・会計事務所は併用で考える

ここまで工程ごとに見てきた打ち手を、手段の側から整理します。どれか1つを選ぶ話ではなく、効く工程が違うので組み合わせます。

手段効く工程効かないこと先に済ませておくこと
経費精算システム1・2・4・6(入力、承認フロー、仕訳連携、データ保存)規程が判定できない形のままだと差し戻しは残る申請区分の設計、規程の条文の判定可能化
法人カード1・5(立替の削減、振込の削減)利用目的・区分の入力は残る。私的利用の統制は別に要る保有範囲と上限の決定、明細データの取込経路
外部のチェック(経費チェックの委託)3(突合・規程照合・二重申請検出の全件実施)税務上の判断、支出の業務必要性の判断は社内と税理士に残る規程と申請区分の共有、判定基準のすり合わせ
会計事務所4の科目・税区分の方針、税務上の判断日々の全件チェックを事務所に求めるのは分担として重い期首に対応表を一度見てもらう

会計事務所との分担は、判断は事務所、手数は仕組みか外部と考えると整理しやすいです。交際費等の該当や出張日当の範囲は税理士の領域で、ここを社内や外部業者が判定することはできません。一方で、領収書と申請の突合や二重申請の検出は判断ではなく手数の問題で、ここを事務所に持ち込むと事務所側の確認時間を増やすだけです。チェック済みの申請データと証憑を事務所に渡す形にすると、事務所は税務の観点に時間を使えます。

当社の4649経費チェックは、この分担のうち工程3を引き受けるメニューです。申請内容と領収書の金額・日付・宛名の突合、自社の経費規程との照合、二重申請の検出、インボイス要件の確認をAIが全件行い、要確認の申請を根拠つきで報告します。差し戻しの指摘を第三者の立場で伝えられるので、社内では言いにくい差し戻しを経理が抱え込む構造も変わります。記帳を自社または会計事務所で行っている場合も、チェックだけの利用ができます。

30日で進める改善手順(テンプレート)

工程別の打ち手を、着手の順序に並べ直します。1か月で全部をやる必要はなく、週ごとの区切りで止めても前の週までの成果は残る形にしています。

第1週:測る。 直近1か月の申請データで、現状診断テンプレートの5指標を出す。差し戻しの理由を6区分で分類し、上位3つの理由を特定する。この週はまだ何も変えない。

第2週:申請区分と規程を直す。 上位3つの差し戻し理由を消す方向で、申請区分とフォームの必須項目を決める。得意先等との飲食に参加者・人数の欄、公共交通機関は3万円未満と3万円以上の区分(前者は領収書不要の明示、後者はインボイス添付を必須)、受領形式の2択を入れる。規程の曖昧な条文を判定できる形に書き換え、代理承認と承認期限を追加する。改定した規程とフォームは同じ日に切り替える。

第3週:対応表を作り、仕訳を区分から起こす。 申請区分から科目・税区分・帳簿記載を決める対応表を作り、顧問税理士に一度見てもらう。以後の仕訳はこの表どおりに起票し、経理が都度判断する件数を数える。判断が残った取引は対応表に追記する。

第4週:精算サイクルを固定し、翌月の指標を比べる。 精算を月1回に固定し、締め日と振込日を全社に告知する。法人カードの保有範囲と上限を決める。第1週と同じ5指標を翌月分で出し、差し戻し率と承認滞留の最大値がどう動いたかを見る。動かなかった指標があれば、その工程の打ち手を見直す。

システムの導入を検討するのは、この4週間が終わってからで十分です。第2週で決めた申請区分と規程を設定として持てるか、第3週の対応表どおりに仕訳を連携できるか、カード明細を取り込めるか——選定の基準がこの時点で手元に揃っています。


経費精算の効率化で削るべきは、経理の入力時間ではなく申請の往復回数と滞留日数です。往復は申請区分と規程の設計で減り、滞留は承認期限と代理承認で縮み、残ったチェックは全件を仕組みで回す。制度が求めていない領収書を集めるのをやめ、申請区分から仕訳が決まる対応表を持てば、システムを入れる前に経理の月末は変わります。まず1か月分の差し戻しを理由別に数えることから始めてください。

よくある質問

Q. 経費精算システムを導入すれば効率化できますか?
入力と集計の作業は確実に減ります。ただし、差し戻しの原因の大半は「規程が判定できない形で書かれている」「申請区分がなく科目を経理が毎回考えている」という設計側の問題で、これはシステムを入れても残ります。導入前に申請区分と規程の条文を判定できる形に直し、システムにはその区分を設定として入れる、という順序にしてください。導入後も、設定した上限や承認ルートが実態と合っているかを月次の差し戻し件数で確認し続ける必要があります。
Q. 経費精算の締め日は月に何回がよいですか?
月1回、翌月の決まった営業日に固定するのが基本です。締め日は月次決算の確定日から逆算して決めます。経費精算の締めが月初5営業日なら、その月の費用が確定するのはそれ以降になり、月次の試算表もそこまで待つことになります。従業員の立替負担を減らす目的で週次精算にする会社もありますが、経理側の支払と仕訳の作業回数が4倍になります。立替負担が問題なら、精算回数を増やすより法人カードで立替そのものを減らすほうが、経理の作業を増やさずに済みます。
Q. 経費精算を外部に任せる場合、会計事務所と経理代行のどちらに頼めばよいですか?
どちらか一方ではなく分担で考えてください。接待飲食費が交際費等に当たるか、出張日当が通常必要と認められる範囲かといった税務上の判断は税理士の領域で、顧問の会計事務所に確認する部分です。一方、申請内容と領収書の突合、規程との照合、二重申請の検出といったチェック作業は、判断ではなく手数の問題なので、仕組みか外部に出せます。事務所が記帳まで担っている会社なら、チェック済みの申請データと証憑を事務所に渡す形にすると、事務所側の確認時間も減ります。分担を変えるときは、事前に事務所と相談して決めてください。